目先の利益を重視しなければならないこともあるかもしれない。だが、それだけでは素晴らしい成果を出すことは難しいのではないか。研究には自由と長期的な視点が必要だと思う。

東京工業大学の大隅良典名誉教授がノーベル医学・生理学賞を受賞することが決定したことは、ご存じの方も多いかと思います。さて、大隅良典名誉教授は応用研究が重視されがちな現状を憂いているそうです。

目先のわかりやすい成果や利益を追求する必要もあるかもしれない。だが、自由な発想とそれを妨げない環境、そして長期的な視点を失った時、進歩は止まってしまうかもしれない。

  • 研究開発の世界においては、目先のわかりやすい成果を素早く出し、利益に繋げなければならないこともあるかもしれない。だがそればかりでは、いずれ利益を出すタネが無くなってしまうのではないか。応用研究を行うためには土台となるものが必要であり、土台となるものを作るのは基礎研究ではなかろうか。
  • 基礎研究は一見役に立たないとされてしまうこともあるようだ。確かに研究したからといってすぐに役に立つわけではないかもしれない。だが、研究成果はいつか役に立つ日が来るかもしれない。整数論もかつては「役に立たない」と言われたが、今やコンピューター関係(暗号など)で大いに役立つものとなった。
  • 基礎研究は短期的には「役に立たない」とされるかもしれないが、長期的視点で考えれば、誰かが基礎研究をしなければ応用研究の土台が無くなる。自由な発想を最大限に活かし、(すぐには役に立たなそうなことでも)様々なことを研究すれば、その成果は未来の人類が活用できる。基礎研究は、未来の人類のために行うものなのかもしれない。

より良い世界を未来の人類に残すためにも、基礎研究にそれなりの時間とお金を割くべきかもしれない

東京工業大学の大隅良典名誉教授は、2016年のノーベル医学・生理学賞を受賞することが決定しました。記者会見では、次のような発言をしています。

サイエンスはどこに向かっているのか分からないが楽しいことなので、これをやったら必ずいい成果につながるというのが、サイエンスは実はとっても難しい。そういうことにチャレンジするのが科学的精神だろうと思っているので、少しでも社会がゆとりを持って基礎科学を見守ってくれる社会になってほしい。

私は「役に立つ」という言葉がとっても社会をだめにしていると思っています。数年後に事業化できることと同義語になっていることに問題がある。本当に役に立つことは10年後、あるいは100年後かもしれない。社会が将来を見据えて、科学を一つの文化として認めてくれるような社会にならないかなあと強く願っています。

分かったようで何も分かっていないことが、生命現象には特にたくさんある。えっ、なんで?ということを、とても大事にする子供たちが増えてくれたら、私は日本の将来の科学も安泰だと思う。そういうことがなかなか難しい世の中になっている。

「社会がゆとりを持って基礎科学を見守って」ノーベル賞の大隅良典さんは受賞会見で繰り返し訴えた

近年は国の財政も厳しくなってきており、国立大学とて懐事情はあまり良いとはいえないようです。授業料は年50万円以上にまで値上がりし、研究予算も絞られつつあるようです。そして、少なくなった予算は短期的な成果を求めて投入されるようになっています。

民主党政権になった時も、「2位じゃダメなんですか?」の名台詞でお馴染みの蓮舫氏が印象的だった事業仕分けで、ただでさえ潤沢とはいえない科学予算にも大削減の嵐が吹き荒れました。長期的視点に立って国民の幸福を実現すべきであるはずの国家でさえも目先の利益を全力で追いかけなければならない時代なのでしょうか。

しかし、目先の利益を追い求めて研究開発をするためには、その土台となる研究が必要になるはずです。そして、土台となるものはほかならぬ基礎研究ではないでしょうか。短期的には「役に立たない」と言われて予算削減の憂き目にあっている可能性がある基礎研究ですが、きちんとした土台がなければ家もビルも立てられません。

基礎研究という土台がきちんと存在すれば、誰かがそこから新しい研究を展開し、何か役に立つ物が出来上がる可能性が出てきます。仮に基礎研究の成果がすぐには役に立たないものであったとしても、未来の人類が研究成果の使い方を発見し、役に立てることもあるはずです。数学の整数論もかつては「役に立たない」と言われたようですが、今ではコンピューター関係(RSA暗号など)で大いに役に立っています。

大隅良典さんが「本当に役に立つことは10年後、あるいは100年後かもしれない。」と述べているように、基礎研究はすぐには役に立たずとも、後に大きな意味を持つこともあるのです。役に立つ物を生み出すためにも、誰かがその土台となる基礎研究を行わなければなりません。そして、今後基礎研究のスポンサーとなるのは、国家のみならず、企業や我々一般市民かもしれません。

たとえ研究対象がすぐには役に立たなそうなものであっても、研究成果は未来の人類が活用することが出来ます。長期的視点に立ち、未来の人類がより良い人生を送れるようにするためにも、今を生きる我々が基礎研究にもう少し関心を向け、応援していく必要があるのかもしれません。

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