部活動強制加入システムの謎が公開される…愛媛県八幡浜市立保内中学校では生徒に対して部活動への加入義務を課す模様

これまで、日本の中学校の一部では、学習指導要領違反の部活動強制加入システムによって生徒の「部活動に入らない自由」を剥奪し、生徒を地獄へと追い落としていました。しかし、その実態(生徒に部活動への加入義務を課す校則の条文など)が学校の公式WEBサイトに掲載されることは無かったのではないかと思います。ところが、ここに来て部活動強制加入システムの実態が掲載された学校の公式WEBサイトが出現したのです。

部活動強制加入システムの闇がついに公開されたが、やっぱり闇は深かった。愛媛県八幡浜市立保内中学校の恐ろしい事例。

  • 愛媛県八幡浜市立保内中学校では、地域の別の中学校と統合した後も生徒全員に対して部活動へ加入する義務を課すようだ。これは明らかに学習指導要領違反である(学習指導要領には部活動について「生徒が自主的に行うもの」だと書かれている)。ここは統合をきっかけに過去の悪習を断ち切るべきではないのか。
  • 設置される部活動も、運動部(10コ)+吹奏楽部+創造部という構成。運動部と吹奏楽部の厳しさは言わずもがな。創造部が一体どのような部なのかはわからないが、運動部と吹奏楽部よりはマシな環境であることを願わずにはいられない。…文書には明記されていないが、私の勝手な考察では転部する自由があるかどうかも疑わしい。
  • 部活動強制加入システムを敷くことを外部に公開したことだけはそれなりに評価したい。だが、やっていることは学習指導要領違反に他ならない。生徒の「部活動に入らない自由」を否定している。まさに鬼畜の所業。部活動強制加入システムを敷くことを決定した極悪人には懲戒免職が相応しいと考えるのは私だけであろうか。

生徒を地獄と絶望の淵に容赦なく叩き落とす「部活動強制加入システム」。愛媛県八幡浜市立保内中学校での実例が今、明かされる。

私がこの記事を執筆するきっかけは、次のツイートを見かけたことでした。

このツイートによると、愛媛県八幡浜市立保内中学校では別の中学校との統合が予定されており、統合後の方針(公開資料)に「部活動は原則として全生徒が参加する(=生徒に対して部活動に加入する義務を課す)」と書かれているらしいのです。問題の資料は、八幡浜市立保内中学校 ≫ 保内中・青石中統合関係の「平成27年度に決定した事項(PDF)」です。

14 部活動

(1) 部活動への加入 原則として、生徒全員部活動に加入して活動する。

(2) 設置部活動(運動部10,文化部2 計12部活動)

  • 運動部男女共通(3):野球・サッカー・水泳
  • 運動部男子のみ(3):バレーボール・ソフトテニス・卓球
  • 運動部女子のみ(4):バレーボール・ソフトテニス・卓球・バスケットボール
  • 文化部男女共通(2):吹奏楽部・創造部

(3) 入部方法について 平成28年度新入生(現小学校6年生)は、上記の設置予定部活動に入部する。ただし、4月は仮入部期間として、正式入部は5月2日(入部状況によって変更の可能性あり)を予定している。

(4) 統合に伴う転部について
ア 平成28年度新2年生(現1年生)の中で、新規部活動(保内中:水泳部 青石中:サッカー部、女子ソフトテニス部、男子バレーボール部、女子バスケットボール部)への転部希望がある場合は、本人・保護者・学校が確認を行い、できるだけ今年度中に転部するかどうかを決定する。

イ 平成28年度新3年生(現2年生)については、原則として転部は認めない。

平成27年度に決定した事項 より(一部は筆者が整形)

今回問題視している記述は、ざっくり要約するとこんな感じになります。。

  • 原則として生徒全員が何らかの部活動に加入し、活動する。
  • 設置される部活動は、野球部・サッカー部・水泳部(男女共通)、バレーボール部・ソフトテニス部・卓球部(男女別に設置)、バスケットボール部(女子のみ)、吹奏楽部・創造部(男女共通・文化部)。
  • 統合に伴って新設される部活動に転部したい場合、新2年生については転部を認めるが、新3年生については認めない。(既存の部活動→既存の部活動への転部の可否については明記されていない)
(平成27年度に決定した事項(PDF)より)

これらの情報を公開したことについては、それなりに評価したいと思います。少なくとも、公式WEBサイト等で「この学校は生徒に対して部活動へ加入する義務を課しています」と宣言していない学校に比べれば1億倍はマシです。部活動強制加入システムを敷きながら公式WEBサイト等で「この学校は生徒に対して部活動へ加入する義務を課しています」と宣言していない学校は、直ちに学校名を公表する処分が相応しいと考えます。

しかし、評価できるのはそこだけです。なぜなら、やっていることは「学習指導要領違反」であり、生徒が当然保持する「部活動に加入しない自由」を真っ向から否定しているからです。学習指導要領 第1章 総則:文部科学省には、次のような記述があります。(赤文字は筆者による強調)

(13) 生徒の自主的,自発的な参加により行われる部活動については,スポーツや文化及び科学等に親しませ,学習意欲の向上や責任感,連帯感の涵養等に資するものであり,学校教育の一環として,教育課程との関連が図られるよう留意すること。その際,地域や学校の実態に応じ,地域の人々の協力,社会教育施設や社会教育関係団体等の各種団体との連携などの運営上の工夫を行うようにすること。

第1章 総則:文部科学省

学習指導要領では、部活動は「生徒が自主的に行うもの」だと定めています。すなわち、生徒には「部活動に加入しない自由」があるのです。また、「部活をやめたい」と思った時も、部活動を行うことを強制する法的根拠はありませんから、「退部する自由」もあります。退部してから別の部に加入することを禁止する法もないので、「転部する自由」だってあります。

しかし、愛媛県八幡浜市立保内中学校の「原則として生徒全員が何らかの部活動に加入し、活動する」という方針は、完全に学習指導要領に違反しています。また、「新3年生については原則として転部を認めない」「新規部活動に転部したい新2年生については今年度中にどうするか決定する」などとわざわざ記述していることを考えれば、「退部する自由」はもとより、「転部する自由」さえ無い可能性も否定できません。部活動をしたくない生徒にしてみれば地獄そのものです。

また、設置される部活動の組み合わせも、「多数の運動部+吹奏楽部+創造部」という構成です。吹奏楽部は一見文化部に見えますが、実際の活動は運動部並み(ヘタすれば運動部以上)に厳しかったりします。幽霊部員となって放課後休日の自由を確保しようにも、運動部や吹奏楽部などでは幽霊部員が咎められる危険性が高いので、創造部というよくわからない部が幽霊部員希望者の避難所となるかどうかが非常に気になるところです。

…以上より、愛媛県八幡浜市立保内中学校(に限らず部活動強制加入システムを敷いているすべての学校)は、部活動以外のことに力を入れたい生徒にとっては地獄でしかない環境です。部活動から逃れるために転校や引っ越しをするというのもバカバカしい話かもしれませんが、確実に部活動の脅威から逃れるためには、(小中学校の場合は)部活動が任意加入な学校に通える学区に引っ越すか、あるいは不登校になるくらいしか方法がないのが恐ろしいところです。

いずれにせよ、部活動強制加入システムは直ちに完全破壊しなければなりません。これまで学校は部活動強制加入システムによって生徒の自由を不当に制限していましたが、いつまでも学習指導要領違反を野放しにするわけには行きません。部活動強制加入システムを廃止に導くためにも、署名活動へのご協力をどうかよろしくお願い致します。

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コメント

  1. 強制加入校どおしの統合なのでしょうから事実上吸収される青石中で不本意な部に加入していた生徒は保内中では別な部に加入してもいいよと言っているだけ。青石中に創造部にあたる部が無かったとすれば創造部があるだけ救われるのかもしれませんが、部活全員加入についても批判が大きくなっているなかで統合・新設される中学なら「両校とも全員加入だったのだから踏襲する」ではなく「新しい中学になるのだから任意加入にする」という選択をするきっかけにすべきなのに、両校の先生方や教育委員会の中にはそういった考えは全く無いのか、それとも変な意見は言えない風土なのか、あえて全員加入批判を封じようとしている一派が前例踏襲をリードしているのか…全国的な批判を浴びさせて任意加入に転換させてあげたい、そう思います。
  2. koguma  | 08/18 18:56
    今こうしている間にも、部活動をやりたくない生徒が救援を求めて叫んでいるのかもしれません。声に出せるかどうかはともかく。統合をきっかけに部活動を任意加入にしたり、部活動をそのものを学校から切り離して地域サークルやスポーツクラブ(もちろん任意加入)に移行することができれば、生徒の「部活動に加入しない自由」が保障されるのですが。前例や慣習が学習指導要領や法律などよりも力を持っているのは、やっぱりおかしいです。改革のためにはどうしても外部の力が必要ということでしょう。保内中に限らず、生徒に対して部活動への加入義務を課すような学校をこれ以上放置することは出来ません。
  3. 海田  | 08/09 4:00
    お礼が遅くなりましたが、私のツイートに 目を留めていただき、ありがとうございます。 あれから当市の市議会でも竹内議員が関連質問( http://www.city.yawatahama.ehime.jp/docs/2016112100024/ )をなさり、 「決して全員に部活動加入を強制するものではありません」(なら全員でなければ強制してもいいとでも?)という答弁が出ては来ましたが、 それ以後、特に何も動きがありません。 当事者の中学生、または新たに中学生になる人らが率先してこのことを問題として取り上げ、人権救済関係の通報を通して外部の力を借りない限り、 問題解決には至りにくいと感じます。