軍事研究は倫理的問題もあるかもしれないが、現実問題として研究費用を出してくれる人がいなければどうしようもないし、国民を守るためには軍事研究も必要ではないか。

学術会議、軍事研究禁止の方針継承へ 検討委が声明案:朝日新聞デジタルによると、日本学術会議は軍事研究禁止の方針を維持するつもりのようです。しかし、私としては、軍事研究に関わるかどうかは研究者の意思に任せるべきであり、一律で禁止するのはいかがなものかと思います。

もくじ

  • 少なくない割合で研究の頭脳たる博士が困窮している現状を速やかに打破するためには、もはや研究費の出所にこだわることはできないのではないか…
  • 防衛のためには誰かが防衛用装備の研究をしなければならない。民生向けの研究費を増額させる努力は必要だが、軍事研究との関わり方は研究者の意思に任せてもいいのでは。

少なくない割合で研究の頭脳たる博士が困窮している現状を速やかに打破するためには、もはや研究費の出所にこだわることはできないのではないか…

皆様は、「博士が100人いるむら」という創作童話をご存知でしょうか。ご存知でない方は、ぜひ博士が100人いるむら(博士100人の村を考察する(平成24年度ver.) | LifeScienceProject)をご一読ください。せっかく博士号を取得するところまで辿り着いたにもかかわらず、不安定な立場に追いやられる人のいかに多いことか。

博士となった彼らは、言うまでもなく研究の頭脳であり、未来の日本を支える貴重な人材です。それなのに、正規雇用の職につくことができず、「ポスドク」などの非正規雇用で研究を続けざるを得ない状況に追い込まれることが多々あります。そうなってしまった理由の一つは、ズバリ「カネがないから」です。いつぞやの事業仕分けでも科学研究費はひどい目に遭いましたが、国立大学などの研究開発型独立行政法人への交付金は以前よりも削減されており、厳しい現状が窺えます。

そのような中で開始されたのが、防衛省の「安全保障技術研究推進制度」です。防衛省が研究テーマを提示し、それに対して研究者が提案を行い、すぐれた提案を出した人に研究を委託するものであり、もちろん防衛省の懐から研究資金が拠出されます。得られた成果は防衛省の研究開発及び民生分野で活用されることになっており、少なくとも現段階では研究成果の公表制限はないようです。

本制度では、

  • 受託者による研究成果の公表を制限することはありません。
  • 特定秘密を始めとする秘密を受託者に提供することはありません。
  • 研究成果を特定秘密を始めとする秘密に指定することはありません。

これらの点は、平成29年度の安全保障技術研究推進制度に係る公募要領、契約書及び委託契約事務処理要領において明記します。

防衛省・自衛隊:安全保障技術研究推進制度(競争的資金制度)

現在、日本のポスドクは任期制であり次の仕事が見つかる保証もなく、正規雇用へ移行できる人はごく限られています。そのような中で防衛省が「研究費を出しますよ」と言えば、研究者のうちのいくらかは防衛省で研究に従事しようと思うでしょう。餓死寸前の人の目の前にパンを置いて「食べるな」と厳命しても、それは無理というものです。

防衛のためには誰かが防衛用装備の研究をしなければならない。民生向けの研究費を増額させる努力は必要だが、軍事研究との関わり方は研究者の意思に任せてもいいのでは。

また、いくら平和平和と叫んでも、現時点では国民を守るためにそれなりの武力が必要になるという現実があります。日本周辺には中国や北朝鮮などの軍備増強を進めている国が存在しているのは事実であり、国際情勢が厳しさを増している中では、日本もある程度は独自の武力を保有する必要があると言えます。相手国に「武力行使したらこちらも痛い目にあうからちゃんと交渉のテーブルに着こう」と思わせられる武力、すなわち「抑止力」は外交交渉で戦争を回避するためにも必要なのです。丸腰の人間が暴力団に拳銃を突きつけられた状態で、どうして暴力団と対等な立場で交渉することができるでしょうか。

武力…すなわち軍隊(自衛隊)を強化するためには、兵士数を増やすか、兵士の質を向上させるか、兵器の性能を向上させる必要があります(実際には補給なども必要不可欠ですが)。ただ、兵士数を増やすために徴兵制を導入するというのは避けなければならないでしょう。兵士の質を向上させるためには職業軍人に目一杯訓練させることになりますが、それにしても限度があります。

徴兵制を避け、有事の際に自国の人的資源消耗を防ぎながら武力を強化するためには兵器の性能を向上させる必要があり、そのためには軍事研究を行うか、民生向けの研究から軍事転用できそうなものを片っ端からかき集めて兵器開発を行う必要があります。軍事研究が「殺人のための研究」であることは否定できませんが、命をかけて戦う自国の兵士(自衛隊員)を守るために必要なのもまた軍事研究です。外交が破綻して戦争になった時、兵士の命を護るものは己の持つ兵器です。軍事研究をせずに自衛隊の装備のアップデートを止めてしまえば、自衛隊員は有事の際に貧弱な装備で戦うことを強いられ、より多くの人が戦死することになります。自衛隊員を守り、国民を守るためには、どうしても兵器開発は必要なのです。

もちろん外交努力によって戦争を回避することは必須です。そして、日本学術会議が言うように民生分野の研究費を増額させることも必要でしょう。ただ、研究者と軍事研究との関わりについては、上からの方針で「軍事研究と関わるのはだめ」とするのではなく、あくまでも研究者の意思に任せるべきなのではないかと考えます。

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