生活保護の「水際作戦」を止めさせて捕捉率を上げるためには、生活保護の自治体負担を無くす必要があるかもしれない。

様々な問題を抱えながらも、最後のセーフティネットとして君臨しているのが「生活保護」です。生活保護は不正受給などが問題視されることが多々ありますが、実際に問題なのはいわゆる「水際作戦」や捕捉率(生活保護受給対象となる人のうち実際に受給している人の割合)の低さです。これを解決するためには、生活保護の自治体負担を無くす必要があるのかもしれません。

もくじ

  • 生活保護費の一部は自治体負担だが、生活保護はおいそれと減らせない。だから自治体は水際作戦に手を染めてしまう。
  • 捕捉率を上げ、誰もがいざという時に生活保護に頼れるようにしなければ、「最後のセーフティネット」としての役割を果たせない。

生活保護費の一部は自治体負担だが、生活保護はおいそれと減らせない。だから自治体は水際作戦に手を染めてしまう。

何かのテストに「日本における生活保護の問題点を1つ以上挙げよ」という設問があったら、皆様はどのような答えを解答用紙に書くでしょうか。

  • 不正受給
  • 職員の劣悪な労働環境
  • コストかかりすぎ
  • 最低賃金より生活保護費が高い
  • etc.
このような答えが出てくるのではないかと思います。しかし、実は不正受給の割合は金額ベースでは1%にすら満たず、その中には「高校生の子どものアルバイト代を申告し忘れた」など、「不正受給」と断罪するにはふさわしくないケースもあります。「生活保護は不正受給が多い」と思ってしまうのは、悪質な不正受給があまりにも大々的に報道されるせいで「生活保護=不正受給」と刷り込まれてしまっているせいです。

むしろ問題なのは、「本来なら生活保護を受給できる人も受給できずに貧困に苦しんでいる」ことです。申請窓口に来た生活保護申請者を窓口の係員が追い払い保護を受けさせない(申請させない)いわゆる「水際作戦」が行われていることは、おそらく皆様もご存知でしょう。「生活保護に頼る=恥ずべきこと」とされる空気も相まって、生活保護の捕捉率(生活保護受給対象となる人のうち実際に受給している人の割合)は、生活保護Q&Aパンフ(日弁連・PDF)によるとせいぜい2割ほどです。

では捕捉率を上げて貧困に苦しむ人を助けよう、となれば良いのですが、事はそう簡単には運びません。今度は費用の壁が立ちはだかります。生活保護にかかる費用の4分の3は国が出していますが、残りの4分の1は自治体負担です。よって、自治体内に生活保護受給者を多く抱え込めば抱え込むほど、生活保護費が自治体の財政を圧迫することになります。

【自治体ランキング】生活保護費「10年で5倍」「予算の1/4」という不都合な真実(高橋亮平) – 個人 – Yahoo!ニュースによると、ひどいところでは一般会計予算の4分の1が生活保護関係の費用で占めているとのこと。流石にこれは極端な例だと思いたいですが、確かにこのレベルまで来てしまっては、「生活保護が財政を圧迫している」事になります。そう考えれば、「水際作戦」で受給申請者を追い払ったり、ホームレスであることを理由にして一律で申請を拒否してしまうのも、無理からぬ事ではあります。自治体の税収にも上限があり、生活保護は一度開始してしまったらそう簡単には打ち切れませんから。

捕捉率を上げ、誰もがいざという時に生活保護に頼れるようにしなければ、「最後のセーフティネット」としての役割を果たせない。

なので、自治体に「水際作戦」を止めさせ、捕捉率を上げて誰もがいざという時に生活保護に頼れるようにするためには、いっそのこと自治体負担をゼロにする必要があるのではないでしょうか。

生活保護に関わる費用の自治体負担がゼロになれば、自治体内の生活保護受給者が増えても財政は圧迫されません。よって、法に反する水際作戦を行ってまで受給申請者を追い払う必要はなくなります。ホームレスの生活保護受給申請を受け付けても財政が圧迫される心配をする必要はなくなるので、ホームレスの受給申請についてもきちんと受け付けることが出来るようになります。生活保護に関わる費用の全額を国が支出するようにすれば、少なくとも「水際作戦」によって保護されるべき人が保護されないという事態が発生することは防げます。

「生活保護に頼る=恥ずべきこと」とされる空気はそう簡単には解決できませんが、それでも生活保護は(少なくとも現行の社会保障制度のもとでは)「他に頼るものがなくなってしまったときの最後のセーフティネット」として存在し、必要になったら誰もが受給できるものであらねばなりません。生活保護が「最後のセーフティネット」としての役割を果たせるようにするためにも、「生活保護費用の全額の国庫負担」を検討する必要があるのかもしれません。

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