新しい働き方が広まりつつある今、「雇われない人間」にも労基法やそれに準ずる法律による保護が必要になってきているのではないか。
投稿日:2017年03月09日
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もくじ
- フリーランスはブラック企業の縛りを受けずに済むが、労働基準法による保護を受けられない
- 「会社に雇われながらも自由に働く」事ができる法律も、「会社に雇われずとも労基法などによる保護を受けられる」選択肢も必要だ
フリーランスはブラック企業の縛りを受けずに済むが、労働基準法による保護を受けられない
現在は、会社と雇用契約を締結し、社員として働くことが一般的とされています。誰かに雇用されて働く場合は労働基準法などの様々な法律の保護を受けられる一方で、様々な縛りを受け入れることにもなります。
- ある一定の時刻に特定の場所に行かなければならない(出社)
- 会社の命令で定時以降も働かなければならない(残業)
- 勤務時間外も副業ができない(副業禁止規定)
- 残業しても残業代が出ない(無賃労働・サービス残業)
- 他多数
ただ、労働基準監督署が完璧に機能しているとは言い難い今、「会社がサビ残や副業禁止規定を是正するのを待てない」という人も少なからず存在します。そのような人が、会社による縛りから解放される「フリーランス」に流れているのではないでしょうか。
確かにフリーランスであれば、会社の縛りは受けません。しかし、フリーランスには大きなデメリットもあります。「労働基準法の保護を受けられない」ことです。フリーランスの場合は会社と雇用契約を締結するわけではないので、労働基準法が保護対象としている「労働者」ではありません。よって、会社側はフリーランスに対して最低賃金や労働時間などの条件を無視して好き勝手にお願いすることも理論上はできてしまいます。
また、フリーランスの場合、会社側はさせる仕事がなくなったらそこで契約を解除することもできます。「労働者」ではないので、労働基準法などによる解雇規制は気にしなくていいわけです。もちろん仕事があったとしても、契約解除をちらつかせて不利な条件を押し付けることもできます。現在の法制度では、自由と引き換えに大変不利な立場に追い込まれてしまうのです。
「会社に雇われながらも自由に働く」事ができる法律も、「会社に雇われずとも労基法などによる保護を受けられる」選択肢も必要だ
もはや終身雇用は崩れ去り、非正規労働者が増えていることからも分かるように、会社側は固定費となる人件費を1円でも抑えることに躍起になっています。また、労働者の側も法律を守らないブラック企業や副業禁止規定などで労働者を縛り付ける企業に嫌気が差してきている人が増えています。そして、会社よりも弱い立場にありながら労働基準法などの保護を受けられない働き方をする個人が増えてきています。…働き方が変わったのであれば、法律もそれに合わせて個人を守れる方向にシフトするべきです。
まず、会社との間に「使用従属性」があるフリーランスについては、労働基準法を全面的に適用しなければなりません。使用従属性が認められる要素については雇用契約と業務委託契約(労働者性)|労働相談に強い弁護士|ベリーベスト法律事務所や使用従属性 ~ 労働基準法上の労働者 ~ – 天邪鬼社労士がゆく!!に記載されているのでそちらを参照していただくことにしますが、ともあれ会社とフリーランスの間に「使用従属性」がある場合は、たとえ契約書のタイトルが「業務委託契約書」などになっている場合でも、実態は「雇用契約」であると判断され、労働基準法が適用されることに(現在の法制度でも)なっています。
また、使用従属性がない場合でも、無茶な条件の仕事を押し付けられることが無いよう、仕事を依頼するときの報酬や納期、その他もろもろの契約条件についての最低条件を定めた法律…いわば「業務委託・発注条件基準法」を制定し、フリーランスに対して無茶な条件を押し付けるような会社を法的に牽制し、違反したときには刑事罰を含めた法的処分ができるようにすることでフリーランスを保護する必要があるのではないでしょうか。
そして、労働基準法などの保護を投げ打ってでもフリーランスになる人を増やしている原因の一つと考えられる「副業禁止規定」や「勤務時間・勤務地等の縛り(転勤など)」などについて再考することも必要ですし、「サービス残業」などは徹底的に会社を処分し、労働基準法による保護を完全なものにすることもまた必要です。現在は、「会社に雇われながらも自由に働く」事ができる法律と「会社に雇われずとも労基法などによる保護を受けられる」選択肢の両方が求められているのではないでしょうか。
参考リンク