雇用問題の難しさ。不安定の中から安定を作るという矛盾。

非正規雇用の問題が叫ばれて久しいですが、これは現在の日本の社会構造ではどうしようもありません。

不安定から安定を生み出す難しさ

  • 正規雇用で人を雇うと、「人件費≒固定費」が成り立ちます。よほどのことがない限り、そうやすやすと首にはできませんから。
  • ところで、企業の利益は、リスクをとった結果の収益であることが多いです。つまり、「企業の収入≒変動収入」です。
  • そして、人件費は企業の収入から出されます。支出は固定、収入は不安定、というわけです。…これはひどい
  • よって、正社員を首にしにくい状況下では、正社員を最小限に抑えて、速攻で首にできる非正規でなんとか回そうということになります。
  • これは、リスクを「国家」「企業」「家庭」のどれがどのように負担するかのバランスが絡む難しい問題です。

企業が非正規雇用を増やすにも理由がある!

ご存知の通り、現在の日本においては、一度正規雇用で人を雇うと、もうちょっとやそっとじゃ解雇できません。「解雇できない」ことは、企業側にしてみれば恐ろしいリスクになります。固定費になって削減しにくくなるので。正社員を雇う限り、「企業」がリスクを負います。しかし、非正規は切りやすいので、この場合はそれほどリスクを負わなくなります。「解雇しやすい=ローリスク」が成り立ちます。

企業の不安定な収入から安定的に人件費を支出する。相当ハイリスクな無理ゲーです。企業とて慈善団体ではないので、できればリスクは背負いたくありません。ここで「非正規を増やして正規を減らそう」となるわけです。

そして、日本の勤労世代に対する社会保障は、残念ながら十分とはいえません。生活保護の前段階のシステムが不十分すぎます。失業保険をもっと拡充するべきだと思います。この時点で、「国家」はそれほどリスクを負担しません。

「家庭」の視点から見ると、正規雇用で雇われれば、ある程度の安定は保証される場合が多いと思います。この場合はリスクを背負いません。しかし、非正規雇用の場合は、中途解雇、更新打ち切りなどの形でリスクを負います。

誰かの安定を生み出すためには誰かがリスクを背負う必要がある。ここに雇用問題の難しさがあります。ブラック企業が生まれるのも、この辺に原因があるのかもしれません。と言っても、ブラック企業を擁護するつもりは1ミクロンたりともありません。雇用契約書に書いた条件(と労働基準法)はキチンと守りましょう。話はそれからです。

リスクをどう捉えるか。

最終的に、労働者は以下のリスクのうちのどれかは背負うことになります。
  • 雇用が不安定になるリスク
  • 転職・再就職がしにくくなるリスク
  • 失業した時に公的支援が受けられない(または非常に貧弱なものになる)リスク

どれも嫌ですが、全部のリスクがなくなるというのは虫がよすぎる話です。そうなれば税金が今より格段に上がり、労働環境も過酷なものになると思います。現在の日本では、一旦仕事を辞めると再就職が困難なので、「転職・再就職がしにくくなるリスク」があるといえます。だから新卒でなんとか条件のいいところに入るために必死に就活し、一旦入社したら必死にしがみつかざるを得ません(だからブラック企業が付け入る隙ができるのです)。

この辺りは、リスクを「国家」「企業」「家庭」の三者がどのように背負うかという問題でもあります。今の日本のシステムだと、失業した時の公的保証は貧弱であると言わざるを得ません。「国家」は大してリスクを背負っていないといえます(その割には毎年借金を積み重ねていますが)。従業員の生活保障は、もっぱら企業に丸投げされているのでしょう。就職できなかった人・仕事をやめた人のことはフェードアウトです。

この辺まで来ると個人レベルでどうこうできる話ではなくなります。しかし、日本の雇用システムがどうあるべきか、一人ひとりが考える必要があると思います。

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