「部活顧問はブラック労働」という意見に対する元中学校長の見解がひどすぎる件について。教師の仕事は部活の指導じゃない。授業を教えるのが本来の仕事だ。

日本の学校の部活動は、これまで生徒教師の双方(とそれぞれの家庭)に多大なる犠牲を強いた上で成り立ってきました。そのために、部活問題 対策プロジェクトが立ち上がり、部活問題を解決しようと動き出しています。しかし、ネットで話題「部活顧問はブラック労働」 元中学校長の見解│NEWSポストセブンに掲載されている東海地方の元公立中学校校長や野々村直通氏の見解があまりにもひどすぎて反吐が出るので、私なりの反論をここに記します。

部活は教員の仕事ではない!!「情熱がある=残業や休日出勤もこなす・長時間勤務」の理屈も違う!!

  • 「部活顧問が忙しいから家庭崩壊」は確実にあり得る。平日も休日も部活動となれば、その教師は家庭にいないも同然。部活シングルマザー(ファザー)、部活孤児が出てくる。よくもまあ「部活顧問で家庭崩壊はおかしい」という趣旨の発言ができるものだ。
  • とある新任教師の「部活採用でもないのになぜ顧問をしなければならないのか」という発言は正しい。全くそのとおりでございます。部活動の顧問は本来の仕事ではない(から給料も出ない)。教師の本来の仕事は授業を教えることだ。部活動顧問の強制は、無賃労働の強制であり、どこからどう見ても完璧な労働基準法違反(ブラック企業)。
  • 「かつては部活動を熱心にやった人が教員になったから、部活の指導も仕事のうちと考える教員が多かった」という理屈もおかしい。仕事のうちなら給料がきちんと出るはずだし、休みだってきちんと取れるはずだ。4週間で4日の休みがなければ労働基準法違反である。それに部活動の指導は正式な仕事でもない。
  • 記事の最後に「生徒と向き合う情熱のない教師には「師」たる資格はないのではないか。」というフレーズがあるが、「残業や休日出勤をしない(部活の顧問をしない)=労働基準法を遵守している=情熱がない」とでも言いたいのだろうか。記事を読む限りではそのように取れる。無茶苦茶だ。労働基準法を遵守することの何が悪いというのか。残業しない人には情熱がないというトンデモな理屈が認められてはいけない。

部活動は生徒も教師もその家庭も蝕む恐ろしいシステム。休養の重要性を理解していないのもおかしいし、私生活を犠牲にすることが賞賛されるのもおかしい。私生活を犠牲にしない人を糾弾するのはもっとおかしい!!

ワークライフバランスが叫ばれて久しい現代ですが、教育の現場では、今なお労働基準法違反(人はこれをブラック企業と呼ぶ)な部活動(などの慣習)が続けられ、教師や生徒、その家庭にまで不利益が及んでいます。教師自身に余裕が無い状態で、どうすれば子供に良い教育を施せるというのでしょうか。教師に余裕がなければ、授業の準備をまともにすることもできず、結局は子供に不利益が及ぶのです。これを解決するためには、教師の仕事を本当に必要な物だけにスリム化し、その他の業務は外部に投げるとか廃止するとかしなければなりません。教師の仕事で本当に必要な物は、突き詰めなくても「授業」の一点に絞られます。教師の仕事は、授業を教えることです。そして、外部委託or廃止すべきものとして挙げられるものが、「部活動」です。

部活動の顧問になることは、(特に運動部だと)平日は遅くまで部活の面倒を見て(恐ろしいことに、教員には残業代が出ないのです)、休日も練習や大会などの面倒を見て(代休なし)、一体いつ休めば良いのかという地獄です。こんな状況では、結婚も子育てもままなりません。教師もまた、一人の人間なのです。部活顧問をすることによる家庭崩壊は、確実にありえます。部活動で平日も休日も家にいないとなれば、当然妻(夫)子はほったらかしです。残された方の親は、まさに「部活シングルマザー(ファザー)」です。離婚や過労死などの理由で、本当のシングルマザー(ファザー)になる可能性もありますし、夫婦どちらも教員で部活動の顧問をやっていれば、離婚しなくても子供は「部活孤児」です。部活顧問の業務により、教師の家庭は完全に崩壊します。(情報・用語の一部は部活問題 対策プロジェクトより)

生徒の側も、部活動による家庭崩壊はありえます。特に運動部だと、平日は遅くまで練習し、休日も練習や大会がびっしり入り、おまけに個人的事情では休めない(ルールの場合もあれば、そういう空気が形成されていたりもする)ともなれば、家族団らんなど出来やしません。泊まりがけの家族旅行など夢のまた夢です。休まずに動き続ければ、身体に疲労が蓄積し、いずれは体を壊したり、最悪の場合は死に至ります(過労死)。そうならないようにするために休日が必要なのですが、そのあたりのことはことごとく無視されます。

国家も地方自治体も企業も労働基準法を厳守せよ!!休みは大事だ!!生徒教師を部活から解放せよ!!現在の部活に関わる生徒教師は部活奴隷だ!!

問題の記事の最後のフレーズに、

教師を「聖職」と呼ぶのは時代遅れかもしれないが、少なくとも生徒と向き合う情熱のない教師には「師」たる資格はないのではないか。
というものがありますが、これも問題だと思います。問題の記事が言おうとしていることを考えれば、「部活動で長時間残業したり、休日出勤(どちらも無賃or最低賃金未満の給料)することを嫌だと思う人は教師の資格が無い」と解釈できてしまいます。労働基準法違反な無賃長時間労働をしたくない人は教師になるなということでしょうか。無茶苦茶です。休むことの重要性を軽視し、「長時間労働=情熱がある」という前時代的な発想に基づくトンデモ発言です。

「子供のために」という理屈で労働基準法違反が許されて良いはずがありません。というか、「子供のため」を思うならば、部活動を廃止し、学校とは無関係の地域スポーツ等(言うまでもなく任意参加(やりたくなければやらなくていい)の原則を徹底)に移行しなければならないのです。これまでは休みなく部活動を行うことが「当たり前」だったのかもしれません。しかし今、その「当たり前」を大幅に見直さなければならない時が来ているのです。現在求められているのは、教師と生徒を部活動から解放し、教師と生徒の自由権を回復することなのです。

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コメント

  1. ヒロシ  | 09/20 19:44
    部活顧問は管理だけ、試合、大会の対外的な学校のその部活の責任者。としての役割が一番。 その部活の毎日の指導、監督、コーチなどは、有給、無給は考える必要あるが、基本ボランティア活動、部活OB,地域の定年退職者、企業スポーツ団体の関係者、等にお願いするしかない。 もう学校の、先生に期待できない、部活は思春期の人間形成で一番大事だと思う。 授業で教えて貰ったことは、学力社会、偏差値至上主義の 頭でっかちな事。 心、精神は部活で鍛えられた。 それは生きて行くためには本当に必要。 今のサラリーマン先生は。世の中の事、知らな過ぎる。 教育者になって下さい。
  2. ヒロシさんへ  | 04/01 1:49
    授業をして、生徒指導もしている。それだけで十分教育者です。部活は本分じゃないということです。 ブラック企業だけが世の中ではありません。 勉学に取り組んでいた同級生は、いわゆる大手企業、優良企業に就職していて、教員はブラックだと確かに認めています。部活はしてこなかった子達こそ、良い就職環境に就くことができています。世の中、そんなものです。