残業はそもそも「例外」であり、閑散期・通常期の業務を処理するために使うものではない。「残業は月平均60時間まで」はあくまでも通過点であり、終着点としてはいけない。

残業上限、月平均60時間=繁忙期は100時間-政府調整:時事ドットコムによると、政府は働き方改革ということで、残業時間の上限を「年720時間・月60時間(繁忙期は月100時間)まで」とするつもりのようです。これまでよりはマシになるのかもしれませんが、ここを終着点としてはいけません。そもそも「例外」である残業が通常時に使われることがないようにしなければならないのです。

もくじ

  • 政府案は確かに現状よりはマシかもしれない。だが不完全なものであることもまた紛れもない事実だ。
  • 今回の政府案はあくまでも「通過点」だ。「終着点」は別のところにある。この案が終着点とならないよう、改善を求め続ける必要がある。

政府案は確かに現状よりはマシかもしれない。だが不完全なものであることもまた紛れもない事実だ。

今回出てきた政府案は、「これまでの規定では実質無制限に残業させることができた。今回は上限規定を設けるし、繁忙期でも過労死ラインは越えないように調整したんだから文句はないだろう?」とでも言いたげな感じです。確かに実際そうではあります。

  • 残業は年720時間まで
  • 繁忙期は月100時間まで(過労死ラインギリギリ)
  • 但し2ヶ月平均で80時間を超えるのはダメ(過労死ラインギリギリ)
…過労死ラインを越境してはいません。いませんが。

このルールは、「日常的に残業をさせ、繁忙期にはもっと残業させる」ことを前提に組まれているものとしか思えません。60時間を20日(週5日勤務と仮定した時の4週間≒1ヶ月あたりの勤務日数)で割ると3時間です。1日あたりの法定労働時間の上限である8時間を足せば11時間です。休憩の1時間を入れると、実に1日の半分を仕事のために過ごすことになります。繁忙期の上限である月100時間の場合は、1日13時間も仕事をすることになります。

確かにこれまでの規定では、特別条項付きサブロク協定によって実質無制限に残業をさせることが可能でした。この規定が導入されれば、実質無制限にはならなくなるでしょうから、これまでよりもマシになることは事実です。しかし、この規定ではまだ労働者の健康やプライベートを守れるとは言えません。

今回の政府案はあくまでも「通過点」だ。「終着点」は別のところにある。この案が終着点とならないよう、改善を求め続ける必要がある。

今回の政府案は、例えるなら震災で何もかもがやられた被災地に避難所を開設して支援物資を送り込むようなものです。どうしようもない現状を改善しているのは確かですが、避難所はあくまでも通過点であり、終着点ではありません。避難所を開設した後もある程度支援を継続し、最終的には皆がプライバシーを守れる住まいを確保し、自立して普通の暮らしを出来るようなところまで持っていかなければならないように、この政府案は「通過点」とし、「終着点」は労働者にとってより良いものにしなければならないのです。

そもそも、労働基準法では労働時間の上限を「1日8時間・週40時間」と定めており、残業はサブロク協定を締結して届け出をした場合のみ「例外的に」合法化されるものです。本来ならば「どうしても先延ばしできない納期に間に合わせねばならない」とか「突然増えた(けど近いうちに減る)一時的な仕事に対処せねばならない」など、どうしようもない時に短期間だけ使用されることが想定されているはずです。残業はあくまでも「例外」であり、少なくとも繁忙期以外の通常業務は週40時間以内の労働できちんと回るようにする必要があります。

くどいようですが、今回の政府案はあくまでも「通過点」であり、「終着点」ではありません。「年720時間まで残業させてOK」を恒久化させないためにも、週40時間以内の労働で普通に暮らせる社会を作るためにも、労働条件の改善を訴え続け、国や企業も労働条件を改善し、過労死する人や長時間労働に苦しめられる人が一人も出ない社会を構築する努力をしなければならないと考えます。

参考リンク

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