災害時でも日本に住む外国人に必要な情報を(日本語のまま)伝える「やさしい日本語」

日本に住んでいる限り、災害の脅威から逃れることは出来ません。発生地に居合わせれば、日本人でも外国人でも関係なく被災することになります。そのようなとき、どうすれば外国人の被災者に情報を伝えられるのか?という問題があります。それに対する解の一つが、「やさしい日本語」です。

必要な情報を「やさしい日本語」で伝えることで、多言語翻訳ができなくても外国人被災者を救うことができる。

  • 災害発生時、情報を短時間のうちに多言語翻訳して伝えることは難しい。翻訳している間に刻一刻と状況は変化するし、そもそも被災地に翻訳できる人がいるかも怪しい。また、翻訳者もまた被災者になり得る。つまり、外国語での対応には限界がある。
  • 外国人といえども、日本で生活していればある程度の日本語は理解できる。簡単な日本語なら分かるのだから、情報を「やさしい日本語」でも提供するようにすれば、(少なくとも難しい日本語で書かれた文章だけで伝えるよりは)外国人にも情報が伝わる。情報を伝える側の日本人にしても、「やさしい日本語」なら外国語の知識がなくても書くことができる。
  • 「日本語+外国語」で必要な情報を伝えるとなれば、日本語の情報を迅速かつ正確に翻訳しなければならない。その場に居合わせたすべての外国人の母語で情報を伝える負担は非常に大きいだろう(というか無理ではないか?)。だが、「日本語+やさしい日本語」ならば、日本語の情報を簡単な日本語にするだけで済む。外国人にもそこそこ伝わるし、情報を伝える側の負担も小さくできる。「やさしい日本語」は、外国人に情報を伝達する上で大きな助けとなるだろう。

情報の多言語翻訳には翻訳の労力・時間と外国語ができる人材が必要になる。しかし、災害が発生すれば、時間も人材も不足する。そこで「やさしい日本語」を使う。

災害が発生した時、必要な情報を正確に多言語翻訳して外国人に伝達するには、相当な労力・時間と外国語ができる人材が必要になります。しかし、災害が起きているわけですから、状況は刻一刻と変化していきます。翻訳にはあまり時間をかけることが出来ません。かと言って、正確性を犠牲にすることも出来ません。誤った情報を伝えたら大変なことになります。誤訳していないかきちんとチェックしたいところですが、そのための人材がいるのかどうかも怪しいところです。

災害発生時、様々な言語を母語とする外国人に対して必要な情報をきちんと伝えるためにはどうすれば良いのか。この命題への答えが「やさしい日本語」です。外国人といえども、日本に住んでいるのであれば、簡単な日本語であれば理解できる可能性は決して低くありません。やさしい日本語を使用しての情報伝達については、弘前大学人文学部社会言語学研究室にて実験が行われています。(「やさしい日本語」の有用性と安全性 検証実験 解説書)なお、こちらの実験では、外国人留学生及び日本人児童(小学校低学年)を対象にしています。

実験の結果、「やさしい日本語」は普通の日本語と比較して、外国人留学生の場合は1.4倍の正解率になったそうです(普通の日本語の場合は約60.5%/やさしい日本語の場合は約84.9%)。また、日本人児童の場合は正解率が4倍になったそうです(普通の日本語の場合は約22.2%/やさしい日本語の場合は約86.7%)。伝えなければならない情報を「日本語+やさしい日本語」で伝えることは、外国人のみならず日本人の子供に対しても有効ということです。災害時には、きちんと情報が伝わるか否かが時には生死を分けるほど重要です。「やさしい日本語」は、多言語翻訳が不可能な環境下でも外国人に対する情報提供を継続する上で大きな助けになりますし、日本人の子供に対してもきちんと情報を伝える助けになります。

また、「やさしい日本語」であれば、情報を伝える側の日本人の負担軽減にもなります。注意事項があるとはいえ、常日頃から使用している日本語で伝える情報を書き出せば良いのですから、外国語に翻訳するよりは確実に負担が小さく、また短時間で文章を完成させることができるはずです。内容のチェックもすべての日本人が行えるため、誤訳の心配もほとんどありません。

日本語の情報を、その場に居合わせたすべての外国人の母語に翻訳して伝えることができれば、それがベストかもしれません。しかし、それが不可能な場合も多々あります。また、可能であっても対応する側の負担は確実に大きくなります。「やさしい日本語」であれば、対応する側の負担を小さく抑えながら、外国人(や日本人の子供)にもきちんと情報を伝えることが出来ます。災害時の対応には、「やさしい日本語」が有効であると考えます。なお、「やさしい日本語」作成支援ソフトについては、別記事で解説します。

参考リンク

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