「アルバイト禁止」の校則も、生徒を部活動に拘束するものかもしれない。あるいはブラック企業を維持するシステムか。放課後休日の使い方は生徒の自由なのに。労基法の遵守は使用者として最低限の義務なのに。
投稿日:2016年07月19日
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学校の「アルバイト禁止」の校則が、会社の「副業禁止規定」を当然のものだと思い込ませてしまう。「アルバイト禁止」の校則が、もしかしたらブラック企業を生み出す元凶なのかもしれない。
- 学校の「アルバイト禁止」の拘束…もとい校則には、様々な問題がある。経済的に恵まれている生徒だけが学校に通っているわけではないのだ。生徒本人が学費や生活費を稼ぐ必要に迫られている可能性も考慮しなければならないし、進学等の費用を自分で準備することも想定される。生徒にだって勤労の権利はあるし、経済事情は家庭によって様々だ。よって、アルバイト禁止の校則は廃止されるべきである。
- アルバイト禁止校則は、学校だけの問題とはならない。アルバイト禁止校則は、生徒に対して「本業(=勉強)に専念してよそ見をするな」という圧力をかけている。場合によっては本業が部活動に置き換えられることもあるが、「本業だけしてよそ見(=副業)はするな」という圧力をかけているという点は変わらない。これが会社の「副業禁止規定」に繋がる。「副業禁止規定」もまた、社員に対して「本業だけしてよそ見(=副業)はするな」という圧力をかけている。これはひどい
- 会社の「副業禁止規定」は、労働者の収入源を会社の給料のみに限定してしまう悪魔の規定だ。これにより、労働者はおいそれと会社を辞めることができなくなってしまう。会社を辞める=全収入喪失となるから。こうして、会社の立場が強くなりすぎてしまう。かくしてブラック企業が生まれてしまうのだ。超重要な企業秘密を取り扱っている人とかは例外としてもいいかもしれないが、一般社員向けに副業禁止規定を設けることは労働基準法で禁止してしまうべきだ。副業禁止規定を会社から駆逐することで、ブラック企業を減らせる可能性がある。
アルバイト禁止の校則は、生徒を学校(部活動)に拘束し、学習の継続を阻むことさえある悪魔の規定。その影響は学校を卒業した後も続く。
労働基準法には、高校生(に限らず18歳未満の年少者)の労働について、以下のように書かれています。
第五十六条 使用者は、児童が満十五歳に達した日以後の最初の三月三十一日が終了するまで、これを使用してはならない。
(中略)
○2 前項の規定にかかわらず、別表第一第一号から第五号までに掲げる事業以外の事業に係る職業で、児童の健康及び福祉に有害でなく、かつ、その労働が軽易なものについては、行政官庁の許可を受けて、満十三歳以上の児童をその者の修学時間外に使用することができる。映画の製作又は演劇の事業については、満十三歳に満たない児童についても、同様とする。第五十九条 未成年者は、独立して賃金を請求することができる。親権者又は後見人は、未成年者の賃金を代つて受け取つてはならない。
労働基準法
労働基準法にも、「15歳になってから最初の3月31日が終了すれば、働くことができる」という趣旨の条文があります。高校生であれば、中学校を卒業している(=15歳になってから最初の3月31日を終了している)ので、法律上は働くことができるのです。高校側でアルバイト禁止の校則を制定している場合もありますが、経済的に恵まれている人だけが高校に通っているわけではないでしょう。中には自分でアルバイトして学費や生活費を稼がなければならない人や、進学費用を自分で稼いでおきたい人もいるはずです。
進学費用については「貧乏なら進学するな」という極論を放つ人もいれば、もう少し穏健に「奨学金を使えばいい」という人もいるかと思います。しかし、日本においては、奨学金は奨学金の名を借りた教育ローン(就職後に本人が返済)となっているものが多々あります。少なくとも、希望者の全員が学費などの全てを賄えるほどの給付型奨学金を貰えることは期待できません。親の負担や就職地点での借金総額を減らすことなどを考えれば、高校生のうちにアルバイトをして進学費用の一部を事前調達するという選択肢は絶対に必要です。そう考えていくと、アルバイト禁止の校則は、学ぶ意志のある生徒が学び続けることを阻むことさえある悪魔の規定です。
アルバイトによって高校の学費や生活費を稼ぐ生徒もいるかと思います。その場合は流石に例外規定(学校と相談の上、アルバイトを特別に許可する)があるかもしれません。しかし、労働基準法上は高校生は働くことが出来ます。放課後や休日の使い方は生徒の自由なのですから、放課後や休日に働いても法的に全く問題ありません。間違っても、学校が生徒に対して部活動への加入義務を課し、部活で放課後休日の自由をなくしてしまうことは許されません(詳細は当ブログや外部のサイトの部活問題に関する記事などを参照してください)。学校側の事情で生徒が持つ勤労の権利を制限するのもいかがなものかと思いますし、生徒のアルバイト事情を把握しておこうという考えが、休日の生徒の動向もきちんと監視しておこうという思想の現れなのかもしれません。恐ろしい話です。いずれにせよ、アルバイト禁止の校則は廃止されるべきです。
学校のアルバイト禁止校則が、会社の副業禁止規定に繋がる。アルバイト禁止の校則を制定している学校は、ブラック企業戦士の練兵所かもしれない。
学校のアルバイト禁止の校則は、学校だけの問題ではありません。日本の会社には「副業禁止規定」なるものが存在する場合がありますが、アルバイト禁止の校則と副業禁止規定には、少なからず関係があるのではないかと思います。
学校のアルバイト禁止の校則は、学校が生徒に対して「お前らは本業(=勉強)だけしてよそ見(=アルバイト)をするな」という圧力をかけるものです。実際には本業が「部活」だったり、「勉強と部活の両立」だったりしますが。一方、会社の副業禁止規定は、会社が労働者に対して「お前らは本業(=会社の仕事)だけしてよそ見(=副業)をするな」という圧力をかけるものです。見事に構造が似通っています。ここから、学校で「本業だけ一生懸命やって副業は一切しない」態度を強制的に習得させ、会社の副業禁止規定に適応できるブラック企業戦士を練兵していると考えることが出来ます。
副業禁止規定の存在により、労働者は会社からの給料以外の収入源を絶たれます。2016年現在、日本にはベーシックインカムがありませんから、生活のためには副業を捨てて会社にしがみつくか、リスクを取ってでも(副業自由な職場に)転職するかの二択になってしまいます。労働者にとっては会社を辞めた瞬間に全収入が無くなってしまうので、嫌々ながらも会社にしがみつくことを余儀なくされます。当然ながら会社側の立場がより強くなるので、理不尽な命令でも押し通せるようになってしまいます。ブラック企業へ一直線です。
日本からすべてのブラック企業を駆逐するためにも、労働基準法によって会社が労働者の副業を制限することを禁止してしまうべきです。企業秘密や軍事機密などを取り扱っている人については例外規定を設けても良いかもしれません(但し副業制限の代償に高めの給料を絶対に出させる規定も追加する)が、少なくとも一般社員に対しての副業禁止規定は、労働基準法によって封じてしまうべきでしょう。労働時間以外の時間は、労働者が自由に使用できる時間でなければなりません。労働基準法を遵守することは、使用者が労働者を雇用する上での最低限の義務です。そして、労働基準法一つまともに守らないようなブラック企業を駆逐するためには、副業禁止規定の制定を禁止する必要があるのではないかと考えます。