「待機時間」でも、緊急対応や電話番が義務付けられていればそれは「労働時間」となり、給料がきちんと支給される。たとえ緊急事態が発生しなくても。
投稿日:2016年08月02日
最終更新日:
待機時間でも電話番や緊急時の対応などを義務付けられていれば、その待機時間は(たとえ電話も緊急対応も何もなくても)すべて「労働時間」になり、給料が支払われる。「休憩時間だけど電話がかかってきたら出ろよ」という指示は労基法違反。
- 労働者が会社の指揮命令下に置かれている時間が労働時間になる。待機時間でも電話番や緊急時の対応を義務付けられていたり、外出が禁止されていたりする場合は、その待機時間は「労働時間」になる(が会社の指揮命令下に置かれていると考えられるため)。つまりきちんと給料が支払われなければならない。
- 「休憩時間」は、労働者が会社の指揮命令下に置かれない(会社から解放される)時間のこと。電話番も緊急対応もしなくていい時間だ。外出したって良いし、睡眠をとっても良い。労働者が労働から完全に解放される時間が「休憩時間」。だから、「休憩時間だけど電話がかかってきたら出ろよ」という指示は労働基準法に違反している。電話番をさせてる地点で休憩時間とはいえなくなってしまう。
- 待機時間の中に働いていない時間があっても、電話番や緊急対応などを義務付ければ、労働者は仕事から完全に解放されているわけではない。電話はいつかかってくるか分からないし、緊急事態もいつ発生するかわからない。いつ発生するとも分からない緊急案件への対応が義務付けられている地点で、こういう待機時間は休憩時間にはならない。たとえ緊急案件が1件もなかったとしても、待機時間の給料を支払うのは使用者の義務となる。
会社の指揮命令下に置かれていれば(給料が出る)待機時間。労働から完全に解放されている時間が(給料のない)休憩時間。
まずは「休憩時間」の定義を確認しましょう。労働基準法では、休憩時間について以下のように定めています。
第三十四条 使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。
労働基準法
- 2.前項の休憩時間は、一斉に与えなければならない。ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、この限りでない。
- 3.使用者は、第一項の休憩時間を自由に利用させなければならない。
以上より、
- 労働時間が6時間を超えたら45分以上のまとまった休憩時間を
- 同8時間を超えたら1時間以上のまとまった休憩時間を
一方で、労働から解放されているわけではない「待機時間(手待ち時間)」といわれるものもあります。例えば、休憩中にお客様が来たらすぐに対応することを義務付けられている場合や、電話がかかってきたらすぐに出なければならない場合(電話番)などが、この記事でいう「待機時間」になります。待機時間の場合は、いつ発生するとも分からない緊急案件(お客様の来店や電話など)に備えて待機すること(案件が発生したらきちんと対応すること)が義務付けられています。これでは「仕事から解放されている」などとは口が裂けてもいえません。
こうした待機時間は「労働時間」にきちんとカウントされます。待機時間中に緊急案件が1件も発生しなくてもです。つまり、使用者は労働者に対してきちんと給料を支払わなければなりません。たとえ待機時間中に緊急案件が1件も発生しなかった場合でも、時間分の給料はきちんと支払う必要があります。労働者は緊急案件に備えて出動可能な状態を維持させられるわけですから。給料をきちんと支払うことは、使用者が絶対に果たさなければならない最低限の義務です。
日本の会社は就業時間が曖昧な(残業をさせまくる)ところが少なくありませんが、こうした待機時間に対しても、きちんと給料を支払わなければなりません。労働者に対して「休憩時間中でも電話がかかってきたらきちんと出ること」みたいな感じの指示を出したら、休憩時間は休憩時間ではなくなり、労働者に時間分の給料を支払う義務が生じます。休憩時間は、「会社にかかってきた電話を無視して寝ていても絶対に怒られない時間」なのです。長時間労働問題もきちんと解決しなければなりませんが、休憩になっていない休憩時間問題についてもきちんと解決する必要があると言えるでしょう。
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