義務教育の段階で、もっときちんと法律について教えるべきだと思う。労働基準法とか、民法とか。
投稿日:2016年02月04日
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わけのわからない学校道徳。法治国家はどこへ行った?
- 学校道徳の教材に、組み体操の練習中に事故が発生し、その後云々(資料PDF)というものがある。道徳教育では「人の失敗を許すことで云々」といった話になるが、学校側の法的責任にはまるで触れていない。明らかに業務上過失致死傷罪の疑いがあるのに。
- 学校道徳教育によって、道徳が法律よりも上位の存在であることを子供に刷り込んでしまっている。なんという治外法権。これでは法治国家ではなく、学校道徳治国家ではないか?
- 現代社会の秩序は、法の支配によって保たれている。現在の学校道徳は、法の支配の理念をまるっきり無視したものと言わざるをえない。学校道徳よりも、労働基準法や民法などの法律や、法の支配の理念を教えたほうが良いのではないか?
法の支配は現代社会の大前提。道徳も校則も部活も就業規則も、法律と憲法には勝てない。
これは何かの冗談ですか? 小学校「道徳教育」の驚きの実態 法よりも道徳が大事なの!? | 賢者の知恵 | 現代ビジネス [講談社] 問題の教材(PDF) 冒頭でもちらっと触れた道徳教材は、なんかもう色々なものを超越し、法治国家どこ行ったんだとしか言いようが無いものでした。まあ読んでいただければわかるかと思います。
昨今安全性が問題視されている組体操の練習に尋常じゃない時間を割き、自由なはずの放課後も練習。運動会前日の練習(ピラミッド)で、一人の児童(わたるくん)がバランスを崩し、全体のバランスが崩壊。つよしくんなる人物が骨折し、病院へ搬送され。つよしくんが学校に戻ってきたとき、事故原因となった(一人の生徒がバランスを崩したくらいで事故になるような体制をとっていた地点で学校側に問題あり)わたるくんがつよしくんに謝罪するも、つよしくんはわたるくんのことをどうしても許せず。その後つよしくんの母がつよしくんに何事か語りかけ、つよしくんの心には、「今一番つらいのはわたるくん」の言葉が強く残り、わたるくんに電話しようと受話器を取る…みたいな感じです。参考資料及び全文はこちら(PDF)
さて、これで素直にきちんと学校道徳教育を受けた良識ある人ならば、「他人の失敗を許すことは大切である」とか、「どんな時でも相手を思いやることは大切である」みたいな感じの模範解答が頭に浮かぶことでしょう。しかし、ここで忘れてはならないのが、法律の存在です。学校外で他人に怪我させるような事故が発生すれば、おそらく事故原因の究明や、怪我についての損害賠償問題、加害者の刑事的責任などが議論されるはずです。そしてそれらには、思いっきり法律が関与しています。過失で人を傷つければ「過失傷害罪」(刑法209条)となり、親告罪らしいです。同じく過失で人を死亡させた場合は「過失致死罪」(刑法210条)となり、こちらは親告罪ではないそうな。今回の組体操中の事故では、学校側は「業務上過失傷害罪(業務上過失致死傷罪)」に問われる可能性が極めて大きいと思われます。一人の児童がバランスを崩したくらいで事故になるようなずさんな体制で練習をさせた地点で、学校側は「安全配慮義務」(読んで字の如く安全について配慮する義務)を果たしておらず、業務上過失傷害罪が成立しないわけがありません。
学校側の刑事的責任は「業務上過失傷害罪(業務上過失致死傷罪)」あたりでしょう。民事的な責任についても、骨折の治療費などについて損害賠償請求が行われれば、学校側がそれを免れることはおそらく不可能です。組体操練習中の骨折事故で、学校側にはこれだけの刑事上民事上の責任が発生しているのです。しかしなぜかそれが無視され、「人の失敗を許すことで云々」といった美談でくくる方向へ。学校道徳はいつから法律を無視できるほどのパワーを得たのでしょうか。これでは法治国家ではなく、学校道徳治国家とでも言うべきものです。まあ日本は慣習治国家とも言えるのですが。どちらにしろ、きちんと法治国家に戻す必要があります。
集団においては、その集団のローカルルール(校則とか就業規則とか)があることがままあります。しかし、それらのローカルルールもまた、法律に勝つことはできません。例えば、ある会社が就業規則で「いくら残業しても残業代は0円」と定めても、それは「労働基準法違反」の一言で是正を要求されます。校則でも同じです。そして、学校道徳もまた、法律に勝る存在ではありません。ローカルルールの優越が認められてしまったら、法律の存在意義が消し飛んでしまいます。また、法律の範囲内といえども、ローカルルールのある団体に対しては、入る入らないの選択の自由が必要です。
学校道徳教育よりも普遍的な法律教育を!!
さて、日本の会社の一部では、相変わらず労働基準法違反が横行し(人々はこれをブラック企業と呼ぶ)、ワークライフバランスが叫ばれて久しいにもかかわらず、長時間労働の問題は未だ解決されていません。労働基準法にある「週40時間労働」を知っている日本人が果たして何割いるのかと。週40時間ということは1日8時間×週5日です。1日8時間で週6日働かせたらそれは週48時間労働になりますよ。1日の労働時間を減らすか何かしなければ残業代の支払対象になると思われます。
ともあれ、これまで労働基準法などの法律に反する数々の慣習がしぶとく残ってきた原因には、「国民に法律の知識がない」「慣習や空気が法律に勝る存在である(慣習治国家)」というものもあると思います。そして、それを解決するためには、労働基準法などの啓発CMを流したり、学校教育で、道徳の時間に労働基準法や民法などを教えたり、法の支配の理念を教える必要があると思います。知識は身を守る助けになりうるのです。