時給システムの限界と長時間労働問題。労働の評価の難しさがここにあると思う。

日本において、アルバイトの給料計算は時給制のところが非常に多いです。時給950円×実働5時間だから今日の給料は4,750円です、みたいな。しかし、実はここに労働の評価の難しさが潜んでいるのです。

時給システムが崩壊するとき

  • 単純な時給システムだと、例えば100の仕事を効率よくこなして2時間で終わらせた(1時間で50.0の仕事をした)人と、同じ仕事をダラダラ8時間かけてやった(1時間で12.5の仕事しかしてない)人では、後者の人がたくさん給料をもらえる(同じ仕事なのに!?)。
  • 時給システムは、ある意味で長時間労働や無駄な残業の温床になる。同じ仕事をダラダラ長時間かけてやるほうがたくさん給料をもらえるから。
  • 今の日本に求められるのは、100の仕事を8時間でこなす(時間あたり仕事量12.5)人よりも同じ仕事を2時間でこなす(同50.0)人をきちんと評価できるシステム。短時間高効率の労働をきちんと評価できれば、長時間労働によって発生している様々な問題は解決に向かう。
  • 同じ労働時間にたくさんの仕事をした人には、その分たくさんの給料を出す必要がある。それが公平な評価ではないか。

時給で評価できない仕事

例えば、ある工場で1時間に100の製品を流れ作業で作ると仮定しましょう。この場合は、おそらく時給システムは(比較的)有効に作用します。どう頑張っても生産ラインの設定を変えないかぎりは1時間に100の製品しかできませんし、何処かで仕事が詰まらないかぎりは100の製品が安定的にできます。なので、原則的に1時間あたりの仕事量はみんな同じです。よって時給制が一番効率的ということになります。まあこの場合も、いい加減な組み立てをする人よりきちんとした組み立ての人を評価するシステムが別途必要ですが。

しかし、仕事はそんな単純な給与計算で済むものだけではありません。例えば何か新製品を開発する場合、時間ごとに区切っていくと、何も出てこない時間と、大ヒット商品が生み出される瞬間がある時間ができます。それを十把一絡げに時給950円で計算することはほぼ不可能でしょう。何も出てこない時間は生産量0に見えるので時給0円になり、大ヒット商品が生み出された瞬間は生産量が凄まじいことになるので時給1000万になることもあり得ると思われます。スティーブ・ジョブズがiPhoneを思いついた瞬間の時給はもはや計算不能と思われます。このような仕事には時給システムを適用できません。

問題はこれだけではありません。例えば目の前に900の仕事があって、以下の条件で二人で分担して作業するとしたら、何が起こるでしょうか?

  • 条件1:社員Aは1時間あたり100の仕事ができる。社員Bは1時間あたり50の仕事ができる。
  • 条件2:社員Aと社員Bは同時に仕事を開始し、900の仕事が全て終わるまで、両者とも仕事を継続する。
  • 条件3:この仕事の給与は時給1,000円とし、税金や諸手当は考えない。
この場合、社員Aと社員Bがこなす仕事量と労働時間及び給与は、
100x + 50x = 900 (xは労働時間)
150x = 900
x = 6 よって労働時間はA,Bとも6時間となる
各々の仕事量は
社員Aは 100 * 6 = 600 となり、社員Bは 50 * 6 = 300 となる
与えられる給与は
1000 * 6 = 6000 よって6,000円 …こなした仕事量に2倍の差があるのに給与は同じ6,000円なのデスカ?

上の結果だけでも、時給制によって発生する不公平がお分かりいただけるかと思います。この格差をより深く理解していただくため、二人の仕事量あたりの給与を出してみたいと思います。
社員Aは、 6,000 / 600 = 10 よって仕事1単位あたり10円
社員Bは、 6,000 / 300 = 20 よって仕事1単位あたり20円
格差ひどい。これはひどい

…ここまで言えば、今の日本に長時間労働、非効率型ダラダラ残業が横行している理由が見えてくるのではないかと思います。効率よく短時間で行った労働が評価される仕組みがなければ、自分の持ち場が完了しても、定時帰宅を良しとしない空気が高効率労働型の人の帰宅を牽制し、挙句の果てに人より多く仕事をこなしても給与にはそれが反映されない。これではダラダラ長時間労働が横行してしまいます。日本人は仕事の効率があまり良くないと言われるのもこれが原因なのです!!

効率良く働ける人をもっと評価するべきだ!!

日本は、これから高齢者が否応なしに増えていき、介護が必要な人口も同じく増えていきます。そうなれば、家族の介護のために離職を余儀なくされる人がますます増えていく恐れがあります。それを食い止めるためにも、非効率な長時間労働を是正し、効率良く働ける人をもっと評価できるシステムの整備を急がねばなりません。先程の例では、1時間あたり100単位の仕事ができる社員Aのほうが評価される(=たくさん給料が出る)システムを作る必要があるのです。アプローチの仕方はいろいろです。時給制と仕事量比例制の並立(仕事量比例での給料の増え方大きめ)とか。生活賃金+仕事量比例制とか。

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