JR北海道の赤字を何とかするためには、赤字路線を徹底的に廃止し、どうしても維持したい不採算路線はJR北海道から切り離すことになるかもしれない。

2016年3月26日には北海道新幹線が開業し、新幹線が青函トンネル経由で本州と北海道を結ぶことになりました。しかし、JR北海道の経営は相変わらず苦しいままのようです。鉄道路線を維持するためとはいえ、いつまでも赤字を垂れ流すわけにも行きません。JR北海道の赤字を何とかするためには、赤字路線を徹底廃止し、どうしても維持したい(しなければならない)不採算路線はJR北海道からは切り離し、第三セクターなどに移管することになるのかもしれません。

公共交通を維持するためとはいえ、いつまでも赤字を垂れ流す訳にはいかない。北海道は寒冷地で設備の維持管理が大変だから、赤字しか生まない路線は冷徹に切り離す必要があるのかもしれない。

  • JR北海道は社名の通り北海道が営業エリアとなる。北海道は寒冷地だから、除雪や設備の維持管理にかなりの経費を要する。また、北海道は広い上に人口は極端なまでに札幌一極集中である(道都札幌市の人口が2015年国勢調査の速報値で約195万人(北海道全体の人口の3分の1くらい)、第二都市の旭川市が同約34万人)。輸送密度低し。おまけにその他の交通機関との競合もある。これでどうやって黒字を出せというのか。
  • JR北海道は赤字と不祥事が積み重なり、新型特急車両は開発中止になった。現存する特急もスピードダウンや減便が行われた。古くなった車両の更新もままならず、北海道新幹線も黒字をもたらすわけではないそうな。青函トンネルの維持費もJR北海道に重くのしかかる。(JR貨物はアボイダブルコストルールなるものでJR各社に支払う線路使用料を抑えているが、せめて青函トンネル区間だけは正規の使用料を支払うべきではなかろうか。)
  • ともあれ、何とかしてJR北海道は鉄道事業の赤字を減らさなければならない。そのためには、赤字を垂れ流すばかりの路線を冷徹にJR北海道から分離していくことになるかもしれない。JR北海道には今のところドル箱となる事業がないから(強いて挙げるならば経営安定基金の運用益か?)、他の路線の黒字を使って赤字路線を維持するような芸当は難しいだろう。経営資源は黒字事業に集中し、どうしても維持しなければならない赤字路線は第三セクターなどに移管するのが妥当だろうか。

JR北海道は寒冷地・豪雪地帯で鉄道を維持しているから、設備の維持管理にも除雪にも多大な経費が必要だ。利用者が少ない路線も多い。これでは赤字になるのは必然。

JR北海道は、社名に「北海道」とある通り、北海道全域が営業エリアとなります。北海道は言わずと知れた寒冷地なので、列車などの設備はきちんと寒冷地仕様にする必要があります(お金がかかる)。雪も降るので除雪も必要ですし(お金がかかる)、北海道はだだっ広いので他の交通機関との競争に勝つためにはスピードも必要になります(やっぱりお金がかかる)。北海道は、鉄道路線を維持するにはただでさえお金がかかる土地です。さらに悪いことに、道内の人口は札幌一極集中が激しいです。2015年国勢調査の速報値では、道都札幌市の人口は約195万人でした。これは北海道の全人口の3分の1に当たります。なお、第二都市である旭川市の人口は同じく2015年国勢調査の速報値で約34万人です。

このような有様ですから、やはりJR北海道の経営は厳しいものとなっています。JR北海道の資料PDFには、JR北海道が管理している各路線の輸送密度が公開されています(資料PDFの9ページ)。輸送密度4000人未満の路線(特定地方交通線=「バス転換or廃止が適当」とされるレベル)が営業キロの実に75%を占めており、該当する路線を機械的に廃止してしまえば、かなりの路線が消え失せます(青函トンネル区間も輸送密度4000人未満なので廃止対象に)。

2016年3月には北海道新幹線が開通しましたが、そちらも当分は赤字事業のようです。青函トンネルは在来線貨物列車と共用になるので、どうしても在来線に合わせて速度を落とさざるを得なく、高速化の障害になっています(整備新幹線区間の「260km/hの壁」も高速化の障害ですが、ここでは触れません)。また、青函トンネルを通過する貨物列車を運行しているJR貨物は、線路使用料を「アボイダブルコストルール」で計算しており、JR各社に対して支払われる線路使用料はかなり抑えめ(貨物列車が走ることで発生した最低限の経費のみ)になっています。青函トンネルの維持費も、JR北海道の厳しい財務状況に対して追い打ちをかけるかのようです。いくらなんでもこれはひどい

JR北海道は赤字の解消が急務。ドル箱路線がない以上、経営資源は黒字事業に集中しなければならない。JR東日本と経営統合するという手もなくはないが…。

このような厳しい環境下に置かれているJR北海道がなんとか命をつないでいるのは、「経営安定基金」の運用益があるからです。この基金の運用益(実態は独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構に高利で貸し付け…支払われる利息が事実上JR北海道救済資金)によって、JR北海道は鉄道事業の赤字を補填し、なんとかここまで延命されてきました。しかし、公共交通維持のためといえども、いつまでも際限なく赤字を垂れ流すわけにも行きません。現時点のJR北海道にはこれといったドル箱事業は見当たりません(少なくとも本業の赤字を補填できるレベルではない)から、経営資源の選択と集中が必要なのかもしれません。

今回ばかりは特定地方交通線レベルの輸送密度となっている利用者が少ない路線をJR北海道から切り離し、赤字の元を除去しなければならないのかもしれません。青函トンネルと函館本線については本州と北海道の間の貨物輸送に貢献していることと北海道新幹線で使用することを考慮すれば、例外的にJR北海道に残しても良いかもしれませんが(その場合はJR貨物がきちんと正規の線路使用料を支払うべき)、その他の赤字路線は冷徹に廃止するか、第三セクターに切り出してしまう必要があるかもしれません。我ながらかなり冷徹なことを書いていますが、JR北海道という会社がきちんと存続できるようにしながら最低限必要な鉄道路線を維持していくためには、赤字ローカル線の廃止はやむを得ないのかもしれません。(最終奥義としてはJR東日本との経営統合という手もありますが…。)

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コメント

  1. 匿名  | 01/26 17:49
    >おまけにその他の交通機関との競合もある。 1980年代にも同じように国鉄の赤字ローカル線が問題になっていました。 そのとき、北海道庁は、それに遠慮して、空港をジェット機が離着陸できるようにすることや高速道路の新設をあまりやりませんでした。 ↑ 当時の北海道新聞に、北海道庁が、既にあった高速道路を運行するバスの認可をやらなかった(国鉄の赤字ローカル線に遠慮した)ので、バス会社が臨時のバスとして運航開始した、その結果、北海道庁が仕方なく、それを認可したという記事が報道されたぐらい赤字ローカル線と競合しないようにしていました。当然、交通インフラ整備もさぼっていました。 その結果が工場が立地しない→人口減少→赤字ローカル線増加という悪循環です。 九州は、そういうことおかまいなしで、空港をジェット機が離着陸できるようにすることや高速道路の新設をどんどんやり、その結果、IC工場がどんどん立地しシリコンアイランドになり人口が増え、今やJR九州はもうかるようになりました。 以上より、赤字ローカル線に遠慮して交通インフラ整備をさぼることだけは避けてほしいものです。
  2. 匿名  | 01/26 18:38
    高速バスに関しては、北海道庁 → 北海道運輸局 認可→許可 の誤りでした。 時期は、1983年(昭和58年)ごろだったと記憶しています。 ↑ 一般道路を使った主要都市間の長距離路線が戦後できたのですが、鉄道の電化により競争に負けて主要都市間の長距離バスがどんどん廃止された。 しかし、高速道路が一部とはいえ北海道にできたので、それを使った高速バスを運行させようとした。 ただ、北海道庁が1980年代に交通インフラの整備に熱心でなかったのは確かです。 以上、誤りがありましたので訂正しておきます。
  3. 匿名  | 03/13 21:04
    JRが悪いのでも知事が悪いのでもない。もう北海道は鉄道を運営できるような土地じゃなくなった。 北海道の人も、そこらへんの理解がなければ、いつまでたっても無益な悪い者探しに明け暮れることになる。 もう腹を括る時期じゃないですか?