自分たちで法律を作れる議員ならともかく、公務員の給料を安易に削るのはマズイ。公務員にストライキが認められていない以上、ストライキをしなくても大丈夫なくらいには高い給料が必要。
投稿日:2016年12月31日
最終更新日:
もくじ
- (法的に)ストライキが出来ない公務員
- ストが出来ない公務員の労働条件を守るシステム
- ストも副業も出来ないならば、それらをしなくても大丈夫なくらいには高い給料を出さねばならない。公務員に限らず。
(法的に)ストライキが出来ない公務員
日本において、労働者には労働三権が認められており、労働組合を結成したり、団体交渉を行ったり、必要とあらばストライキなどを行うことが認められています。しかし、どういうわけか公務員は労働三権が制限されているのです。国家公務員も地方公務員も争議権(ストライキを行う権利)は認められておらず、団結権や団体交渉権も制約されることがままあります。ちなみに副業も制限されています。
労働組合を結成することは使用者と対等な立場で交渉し、自らの権利を守るために必要なことですし、団体交渉権がなければそもそも「労働組合」が交渉のテーブルに着くことさえ出来ません。そしてストライキという実力行使が出来なければ、ブラック企業の餌食になってしまう恐れがあります。労働三権が制約されている地点で、公務員の立場は決して安泰というわけではありません。
ストが出来ない公務員の労働条件を守るシステム
とは言え、流石に労働三権を制限してそれだけというのでは、公務員の立場が弱くなり過ぎてしまいます。いかに公共サービスのためとはいえ、本来持っている権利を奪い取ってしまうわけですから、その代わりになる相応のものを用意する必要があります。そうでなければ「公務員=地獄」の恒等式が成立してしまい、誰も公務員試験を受けなくなってしまいますから。
国家公務員の場合は「人事院」という機関が民間の給料を調べ、それを参考にして「給料はこのようにしなさい」という勧告を行います。地方公務員の場合も「人事委員会」あるいは「公平委員会」という組織が同じようなことをします。これにより、ストライキをしなくても給料が民間と比べて不当に低い水準に留め置かれないようにし、公務員を守っているのです。
…もっとも、≫ 公務員の労働基本権でILOが10度目の勧告 公務員の労働基本権の保障を「重ねて強く要請する」にもありますが、 ILO(国際労働機関)は日本政府に対し、「公務員の労働基本権を認めよ」という勧告を2016年地点で既に10回も行っています。ILOから見れば、日本の公務員は「権利を奪われているがそれに見合う待遇が保障されていない」という状態でしょう。
ストも副業も出来ないならば、それらをしなくても大丈夫なくらいには高い給料を出さねばならない。公務員に限らず。
公務員の争議権が制限されている今、公務員は労働条件が悪化しても、ストライキを起こして抗議することが出来ません。また、給料を下げられても、副業をして減った分の収入を補うことも出来ません。ストライキや副業を制限するというのであれば、それらをしなくても十分生活できるような給料を出すことは使用者側の最低限の義務です。公務員ならずとも、副業禁止規定を残している会社ならどんなことがあろうとも社員が飯に困らない給料を出すことが最低限の義務です。権利を奪うからには、それ相応の代償を支払わねばならないのです。
にも関わらず、国家公務員の給料は「復興財源捻出のため」という名目で削られ、地方公務員も自治体によってはかなり給料を削られています。また、公務員の給料については世間から批判されることも少なくはなく、ただでさえ給料を下げろという圧力がかなり強い状態です。確かに公務員は「全体の奉仕者」ですが、だからといって低賃金で長時間働けと言うのはあまりにも酷です。
「公務員の給料は(相対的に)高くなってはいけない」と思う人もいるかもしれませんが、その場合も生活できる水準の給料は絶対に必要ですし、民間の給料と比べてあまりにも低い額にしてしまうと、企業が「公務員もあれくらいしか貰っていないんだから」と言って給料を引き下げる可能性もあります。
公務員のボーナスが公表されるのは「公務員だってあれだけもらってるんですよ?」って私企業の労働者が経営陣に圧をかけたり、良心的な経営者が「それぐらいはちゃんと払ってあげないとなー…」って内省させる材料なのだから、なんで怒る対象を勤め先でなく「行政と公務員」に向けるのかが不思議
— いいかんじ (@VoQn) 2016年12月9日
いずれにせよ、公務員が本来労働者に与えられている労働基本権や労働時間外の副業を制限されていることには変わりありません。権利を制限するならば、その権利がなくてもちゃんと生活できるような(少なくとも相対的貧困に陥らないような)待遇を与えなければならないのです。公務員に限らず、本来存在する権利を制限されている人には、それ相応の良い待遇があって然るべきではないでしょうか。
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