世界史フラッシュの名作「ローマの鍵」シリーズ

今日はちょっと趣向を変えて、ニコニコ動画で公開されている世界史フラッシュの名作「ローマの鍵」シリーズについて書いていきたいと思います。作者様のサイト→FLASH/温故知新 ローマの鍵1 – ニコニコ動画:GINZA

「ローマの鍵」シリーズの概要

  • 舞台となるのは6世紀中頃の欧州。かつて地中海世界の全てを治めていたローマ帝国は395年に最終分割がなされた後、西側の帝国(西ローマ帝国)は476年に滅亡し、東側の帝国(東ローマ帝国/ビザンツ帝国)も(最終的に滅亡するのはずっと先の1453年だが)瀕死の状態だった。そのような中にあって、失われたローマの栄光を取り戻すためにその生涯のすべてを捧げた二人の男がいた――
  • 二人の男の名は「ユスティニアヌス」と「ベリサリウス」である。ユスティニアヌスは当時の東ローマ帝国皇帝。高校世界史でも多少は出てくる。彼の時代に東ローマ帝国は旧都ローマを奪還し、最大版図を実現した。ハギア・ソフィア(アヤソフィア)大聖堂が再建されたり、ローマ法大全が編纂されたのも彼の時代。ベリサリウスは東ローマ帝国史上最高の名将。ベリサリウスの軍事的才能と皇帝への忠誠心がなければ東ローマ帝国最大版図の実現は決して成し得なかったであろう。この二人の他にも様々な登場人物が出てくる。
  • 彼らの時代は世界史上最大クラスの火山噴火やペスト(黒死病)が発生。戦乱、飢饉、地震、疫病…恐るべき災厄が次々と襲いかかった。この物語は、そのような中で「ローマの栄光」が人々の精神的主柱になると信じ、無謀とも言える大ローマ帝国再興事業を断行したユスティニアヌス大帝と、ローマの栄光を取り戻すために戦い続け、帝国を守ろうとしたベリサリウス将軍の物語である――

ユスティニアヌス大帝とベリサリウス将軍――「ローマの栄光」を取り戻すために生涯を捧げた男

高校で世界史を履修した人であれば、「ユスティニアヌス大帝」の名前を覚えている方もいるかと思います。高校世界史においては東ローマ帝国(ビザンツ帝国)そのものの扱いがそこまで大きくないこともあって(1000年以上存続した帝国なのに)、個人名があがる人物は非常に少ないです。しかし、東ローマ帝国は(長い歴史の途中で変質したとはいえ)「ローマ帝国」そのものです。古代ローマ帝国が東西に分割された後、東西の帝国を区別するために便宜上「東ローマ帝国」とされましたが、あくまでも「ローマ帝国」です。しかし、諸事情で旧都ローマをはじめとする旧西ローマ帝国領は蛮族の手に落ち(西ローマ帝国滅亡)、東ローマ帝国も瀕死の状態に追い込まれ、ローマの栄光は失われてしまいました。

そして、火山噴火やそれに伴う飢饉に疫病、地震と災厄が次々と襲いかかり、人々が絶望の淵にいた中で、失われた「ローマの栄光」を取り戻すことが人々を絶望の淵から救い、未来の人々の精神的主柱になると信じ、ユスティニアヌス大帝は万難を排して大ローマ帝国再興事業を断行することを決意しました。旧都ローマを含む西ローマ帝国領(の一部)奪還やハギア・ソフィア(アヤソフィア)大聖堂の再建、ローマ法大全の編纂など、様々な事業を行いました(しかし、そのために戦乱や財政赤字といった新たな災厄を呼び込んでしまい、国民にもものすごい負担を押し付けることになりました。当時の人々には恨まれたそうですし、現代の人々にも「国家を疲弊させた無能な暴君」と評価されることもあります)。

ベリサリウス将軍は、対ペルシャ戦、対ヴァンダル戦、対ゴート戦、対ブルガール戦と常に寡兵で勝利を収めてきました。ユスティニアヌス大帝がベリサリウス将軍に対して疑惑の眼差しを向けていた(ローマ帝国において帝位を簒奪した人は軍人が多いです。というわけで、皇帝からすればいつベリサリウス将軍に帝位を簒奪されてもおかしくないと考えてしまうのも当然といえば当然です)のもまた、ベリサリウス将軍が寡兵で戦わなければならなかった理由の一つです。そのような中でも軍を率いて勝利を収め、また将軍本人の戦闘力もかなり高かったようです。鋼鉄の忠誠心と高い戦闘力を兼ね備えた名将軍の活躍なしには、旧都ローマを含む西ローマ帝国領(の一部)奪還は到底成し得なかったといえます。ちなみに、ユスティニアヌス大帝とベリサリウス将軍はトラキア(バルカン半島南東部。現在のブルガリア南東部・ギリシャ北東部・トルコのヨーロッパ部分)の農家出身といわれています。

また、ローマの鍵シリーズは本編動画12本+番外編動画3本(全て見ると2時間近く)の大長編なので、様々な登場人物がいます。東ローマ帝国側では皇后テオドラやベリサリウスの妻アントニナ、ベリサリウスの秘書官プロコピウス、皇帝の甥ゲルマヌスなど(ほか多数)が登場します。東ローマ帝国のライバルとして登場するのはペルシャ王ホスロー1世やヴァンダル王ゲリメル、東ゴート王ウィティギス、同トティラ、東ゴート王国将軍テヤなどが主要登場人物と言えるでしょうか。戦乱や疫病等でグダグダな状態になっている中でも、彼らは彼らなりにベストを尽くそうとしました(中にはお笑い要員もいますが)。そして、彼らがどのような未来を目指したのか。ユスティニアヌス大帝とベリサリウス将軍は未来に何を残そうとしたのか。その答えは、ぜひとも自分の目で確かめて下さい。栄光のローマのために!ローマの鍵1 – ニコニコ動画:GINZA

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コメント

  1. R・グループ  | 05/19 21:27
    自作の紹介ありがとうございます! こうやって感想をいただけると、本当に造った甲斐がある次第です。 甥のゲルマヌスですが、作中では病死して退場ですが 実は、この息子が帝位を巡って争います。 このローマの鍵の人間関係の拗れで、後の帝国は混乱し、フォカスの簒奪、ヘラクレイオスの登場となるわけです。 大帝の跡は要領のいいだけの甥が継ぎますが、ホスローと開戦したり(勝ってこないだろ!)、ナルセス解任してランゴバルド族にイタリアを取られたりと散々 しかも発狂した(おそらくフリ)して政務を投げ出して、さらに混乱するといいますから、なんというか、とても後味が悪いですね。 ヒーロー物のように世界は平和になりましたといかないところが史実物所以でしょうか
  2. koguma  | 05/20 1:38
    大帝在位中も戦乱の時代だったというのに、その後も混乱続きですからね…世界平和は遥か遠くです。ペルシャが攻めてきたりイスラームが攻めてきたりで7世紀頃に帝国の東方属州が失われたのも経済的にかなりの痛手です。この後も様々な災厄が帝国を襲いますが、その度に命拾いして1453年まで存続したのは素直にすごいと思います。高校世界史での扱いはそこまで大きくない感じがしますが、世界史資料集にある各世紀ごとの世界地図にはきちんと顔を出して存在感を放つ東ローマ帝国が大好きです。東ローマ皇帝の中では個人的にはコンスタンティノス5世やバシレイオス2世、ミカエル8世、マヌエル2世あたりが好きです。…コンスタンティノス5世は後世「コプロニュモス(う○こ)」という不名誉なあだ名を頂戴しているあたり、どんだけ過激にイコノクラスム推進したんだよ!!って感じです。バシレイオス2世は帝国に最盛期をもたらした孤独な専制君主というイメージです。東ローマ帝国は世界史上稀に見る1000年帝国を成し遂げて見せましたが、それには「最も狡猾なギリシア人」の名に違わぬ見事な策略で帝国を復活させたミカエル8世と帝国最末期に燦然と輝く名文人皇帝マヌエル2世が帝国の延命を成功させたのも大きいのではないかと思います。彼らの活躍を動画で拝める日は果たして来るのかどうか…