部活動のブラック化をシステムの力で防ぎ、教員と生徒を部活問題から永久に解放するためには、部活動の暴走を規制する法律が必要だ。

これまで「生徒の自主的な参加」により行われるという建前で行われてきた部活動ですが、一部の学校では生徒や教員に対して部活動への参加義務が課せられたり、活動が過熱化して生徒や教員が苦しむという問題が発生しています(部活問題・ブラック部活動)。このような事態を防ぐためには、部活動のブラック化を防ぐ強固なシステム…すなわち法的拘束力があるルール(法律)が必要なのではないでしょうか。そこで、私はブラック部活を二度と発生させないための手段として「部活動に関する法律」の制定を提案したいと思います。以下、「部活動に関する法律」(私案)の条文です。

部活動に関する法律(部活動規制法・私案)

  • 2017年8月16日 追記修正
  • 2018年2月8日 追記修正

前文

本法は、日本の学校において長きにわたって続けられた部活動システムの問題点を鑑みて、部活動の犠牲になる人を二度と出さないために制定される。本法によって部活動に加入しない自由及び休養の自由を確立し、現在及び将来の人々を部活問題から永久に解放することを目指す。きちんとした休養を取らなければ人間が健康的に活動を続けることが出来ないのは自明のことである。我々は休養を取ることが否定的に捉えられていた過去を反省し、休養を取ることを否定する過ちを二度と犯さないことを決意し、また個人の自由を未来に至るまで断固として守り抜くことを決意し、本法を制定する。

第一章 部活動の定義と運営について

第一条 部活動は、生徒の自主的、自発的な参加により行われる教育課程外の活動である。生徒がスポーツや文化、科学等に親しみ、生徒の成長に資するものとなることが期待される。(注釈:部活動は学習指導要領で「生徒の自主的、自発的な参加により行われる」と定められている)

第二条 部活動を学校に設置するか否かは、学校設置者が定める。

  • 第二項 部活動を設置する場合、学校設置者は、部活動が安全に行われるようにするために部活動の指導者(教員、外部人材等)を指導監督しなければならない。
  • 第三項 部活動を設置する場合、学校指導者は、部活動の指導者として適切な人材を確保する。部活動の指導者に対しては適切な対価を支払うものとし、具体的な待遇については、部活動の指導者が健康で文化的な生活を営めるような条件を労働基準法及び最低基準法に反しない範囲で政令または省令で定める。
  • 第四項 諸般の事情で部活動の継続が困難になった場合、学校設置者は部活動を廃止または休止しなければならない。生徒・教員等を犠牲にして部活動を強引に維持するようなことがあってはならない。

第ニ章 部活動の強制の禁止

第三条 部活動は、学校に在籍する生徒が自主的・自発的に参加するものである。よって、いかなる団体(学校・自治体を含む)・個人も、学校に在籍する生徒に対して部活動への加入・参加の義務を課すことを絶対に禁止する。また、生徒が部活動を休むこと・退部することを申し出た場合、何人たりともこれを妨げてはいけない。

  • 第二項 学校設置者並びに校長は、教員が生徒に対して部活動への加入を強制することが無いよう、指導監督する義務を負う。
  • 第三項 学校に在籍する生徒から無差別に部活動にかかる費用(各種団体等に納入する会費等を含む。)を徴収する行為は、これを禁止する。(注釈:この条文で教材費などと一緒に全生徒(の保護者)から部活動費を徴収する行為を放逐する。部活動費徴収を正当化するための加入強制は第一項で破壊する。)

第四条 教員を部活動の顧問として従事させる場合は、当該教員の書面による同意が必要である。(注釈:給特法(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)も廃止し、教員にも正規の残業代が支給されるようにする。)

  • 第二項 非正規雇用あるいは試用期間中の教員を部活動の顧問として従事させることは、本人の同意の有無を問わずこれを禁止する。(注釈:正規採用の可否をチラつかせるなどの手法によるパワハラで部顧問を強制するような行為を牽制・封印するための条文)

第三章 部活動の休日・活動時間

第五条 部活動は、原則として以下に定める日を休日としなければならない。休日は、各人がこれを自由に使用できなければならない。

  • 土曜日
  • 日曜日
  • 国民の祝日・国民の休日及び振替休日
  • その他、政令または省令で定める日(注釈:ノー残業デーとなる水曜日やプレミアムフライデーとなる毎月の最終金曜日の取り扱いは要検討事項)
また、学校の長期休業期間中については、長期休業の日数から上に定めた休日を減じた日数のうち、半分以上の日数を休日としなければならない。これについては、連続した休日となるよう、最大限の配慮をしなければならない。
  • 第二項 真にやむを得ない事情がある場合は、1ヶ月につき2日まで、休日を活動日としてもよい。但し、休日の振替を確実に行うこと。また、土曜日または日曜日を活動日に変更できる日数は、1年につき4日を上限とする。
  • 第三項 政令または省令による部活動の休日の変更は、休日の追加のみ許される。休日の移動・廃止は許されない。

第六条 部活動の活動時間については、1日につき2時間を上限とし、1週間あたりの活動時間は、6時間を上限とする。また、活動中は適切に休憩を挟まなければならない。

  • 第二項 長期休業期間中については、1日につき3時間、1週間あたり12時間まで活動を行ってもよい。但し、活動する人の体調には最大限配慮しなければならない。
  • 第三項 活動時間外に「自主練習」などの名目で練習をすることを強制したり、地域体育などの名目で練習時間の延長を行うなどの活動時間規制を無力化する行為は、これを固く禁止する。

第四章 違反時の罰則・責任の所在

第七条 部活動時に発生した事故等については、学校設置者が責任を負うものとする。

第八条 ある学校の部活動が本法の第三条または第四条に違反していることが発覚した場合、学校名を公開の上、当該学校で違反行為を行った部活動は5年間の活動禁止処分及び新規部員募集禁止処分とし、当該学校の校長及び教育委員会の委員全員を直ちに懲戒免職する。10年以内に2回以上違反を繰り返した場合、学校名を公開の上、当該学校の校長及び教育委員会の委員全員を直ちに懲戒免職する。また、当該学校の部活動は一旦全廃した上で、5年間再設置及び新設を禁止する。

第九条 ある学校の部活動が本法の第五条または第六条に違反していることが発覚した場合、違反1回目については、学校名を公開の上、当該学校で違反行為を行った部活動は2年間の活動禁止処分及び新規部員募集禁止処分とし、当該学校の校長及び教育委員会の委員全員については2年間80%の減給及び訓戒処分とする。10年以内に2回以上違反を繰り返した場合は、学校名を公開の上、当該学校の校長及び教育委員会の委員全員を直ちに懲戒免職する。また、当該学校の部活動は一旦全廃した上で、3年間再設置及び新設を禁止する。

第十条 違反した学校が私立学校の場合は、理事長及び校長に辞職勧告を行うことによって、懲戒免職の代替とする。また、第三条または第四条に違反した場合、または10年以内に2回以上第五条または第六条に違反した場合は、学校設置者に対する私学助成を10年間減額または打ち切るものとする。また、当該学校の部活動は一旦全廃した上で、第三条または第四条に違反した場合5年間、10年以内に2回以上第五条または第六条に違反した場合は3年間、部活動の再設置及び新設を禁止する。

第十一条 自治体の方針で本法の第三条、第四条、第五条または第六条の内1つ以上に違反していた場合は、自治体名を公表する。また、当該自治体の長を即時強制解任し、10年間公民権を停止する。また、本法に違反する方針の決定に関与した教育委員会の委員及び校長の全員を直ちに懲戒免職する。また、当該自治体に設置されたすべての学校において、部活動は一旦全廃した上で、5年間再設置及び新設を禁止する。

第五章 いわゆる「ブラック部活」の根絶と再発生の予防

第十ニ条 部活動の活動実績は、これを入学試験・入社試験等の評価基準として用いてはならない。部活動に所属していない(いなかった)ことによる差別的取扱いは、これを一切禁止する。
  • 第二項 学校や企業で部活動に所属していない(いなかった)ことによる差別的取扱いが確認された場合は、当該学校名・企業名を公開する。

第十三条 学校は、校則(部活動の規則・生徒会則を含む)の全文を外部に公開しなければならない。校則の全文を公開していない学校については、学校名を公表する。校則が暗黙の了解などによるものだった場合は直ちに校則のすべてを文書化し、本法施行日から起算して120日以内に公開し、誰もが自由に校則の全文を閲覧できる状態に置かなければならない。(注釈:学校治外法権を弱体化させるための条文)

  • 第二項 校則は法律に違反しないことはもちろんのこと、生徒の人権・自由権を最大限考慮して制定される必要がある。生徒の自由を過剰に制限してはいけない。
  • 第三項 本法施行日から起算して120日以内に校則の全文の公開を行わなかった学校については、本法第三条に違反したものとみなして罰則を科す。

第十四条 学校及び教員は、生徒に対して部活動への加入を強力に呼びかけてはいけない。「自主的、自発的な参加」の鉄則を逸脱することは許されざる行為である。(注釈:学校及び教員が「部活に入らなければならない」という空気を作り出して生徒を半強制的に部活動に動員することを防ぐための条文)

第六章 ブラック部活動取締センター

第十四条 あらゆる組織及び個人は、学校や自治体などが本法に違反する行為をしていた場合、国が設置運営するブラック部活動取締センターに通報することが出来る。ブラック部活動取締センターは、通報があった場合、3開庁日以内に学校などの捜査を開始し、本法に反する行為が確認された場合は直ちに処罰を行わなければならない。また、通報がない場合でも、学校及び自治体に対しては、ブラック部活動取締センターの判断で、直ちに捜査を開始できる。

  • 第二項 ブラック部活動取締センターに通報した者に対する差別的取扱いは、これを一切禁止する。
  • 第三項 学校または自治体が捜査を拒否した場合は、所定の手続きを経て、本法第三条及び第四条に違反しているものとみなし、処罰を行うことが出来る。
  • 第四項 国は、ブラック部活動取締センターが学校等に本法を遵守させ、生徒及び教員の有する自由を保護する業務を十分に行えるよう、適切な支援を行わなければならない。

第十五条 部活動を行うすべての学校及び部活動を行う学校を有する自治体は、少なくとも2年に1回、ブラック部活動取締センターによる定期監査を受ける義務がある。定期監査を拒否した場合、本法第三条及び第四条に違反しているものとみなし、学校名または自治体名を公表した上で処罰する。

第十六条 ブラック部活動取締センターは、法務大臣が監督する。(注釈:第三者による監査をきちんと行うため)

筆者のあとがき

私としては、「現行の部活動システムをこのまま維持するのはどうあがいても不可能であり、部活問題の完全解決・ブラック部活動の再発防止のためには現行の部活動システムの廃止もやむを得ない」と考えています(部活問題の解決策としてはかなりの過激派か?)。そして、放課後の生徒の居場所づくりについては学校外の組織など(クラブチーム、サークル、同好会などなど)に委ね、学校と部活動は分離するのが良いのではないかと思います(学校外の組織が学校の設備を有効に活用するのはOK)。

ただ、部活廃止は部活問題解決の手法としてはかなり過激ですし、部活動システムを存続させるにせよ廃止するにせよ、部活動が存在する間に生徒と教員が無駄に苦しむことがないようにするために、法的拘束力があるルールで部活動の暴走を防ぐ必要があるのではないかと思います(流石に国会で部活動規制法について審議するのは厳しいかもしれませんが…)。

ちなみに、私は過去にも「部活動に関する法律」についての記事を投稿しており、この記事に掲載した条文はこちらの記事の条文を増補改訂した上で部活動の外部移行(廃止)に関わる条文を削除したものです。

部活問題に関する書籍はこちら

このブログを応援する・寄付する

当ブログでは暗号通貨による寄付を募っております。

モナゲボタン モナゲボタン

Bitcoin:

Monacoin:

Litecoin: