ゆうちょ銀行の預入限度額を引き上げたいなら、預金保険の最大保護額もセットで引き上げるべきである
投稿日:2016年06月17日
最終更新日:
ゆうちょ銀行に「暗黙の政府保証」がある以上、預金保険の最大保護額をセットで引き上げない限りは「ゆうちょ銀行の預入限度額引き上げ=民業圧迫」になってしまう
- いくら郵政民営化したからといっても、未だにゆうちょ銀行には「暗黙の政府保証」がある(=ゆうちょ銀行に預けたお金はたとえゆうちょ銀行が破綻しても必ず戻ってくる。というかゆうちょ銀行は絶対に破綻しない)。それに対して民間の銀行が破綻したら預金は最大でも1000万円までしか保護されない(預金保険)。預金保険の最大保護額の引き上げがないままゆうちょ銀行の預入限度額を引き上げる(=政府保証枠を引き上げる)のは不公平。民業圧迫。
- ゆうちょ銀行の預入限度額を引き上げるならば、預金保険の最大保護額もセットで引き上げなければならない。預金保険の最大保護額をセットで引き上げれば、銀行が破綻した時に保護される金額という意味ではゆうちょ銀行と民間の銀行が対等になる。預金保険の最大保護額をセットで引き上げれば民業圧迫にはならない。
ゆうちょ銀行には「暗黙の政府保証」がある。預金保険の最大保護額がゆうちょ銀行の預入限度額を下回るのは明らかに民業圧迫。
まず、ゆうちょ銀行に「暗黙の政府保証」があることを理解する必要があります。まず、2015年11月9日地点でゆうちょ銀行の株式の74%余りは日本郵政が保有しています(資料PDF)。また、2015年12月17日地点で日本郵政の株式の80%余りを財務大臣が保有しています(資料PDF)。つまり、何かあれば財務大臣(すなわち日本政府)が日本郵政を通じてゆうちょ銀行の経営に介入できる構造です。これにより「いざとなったら政府が口出しできるんだから何があってもゆうちょ銀行は経営破綻しないよね」という認識ができてしまいます。また、郵政民営化前は日本政府・日本郵政公社が郵便貯金を運営していた(政府保証がある)という歴史があり、「ゆうちょ銀行」という名前からも政府保証があった歴史が感じられます(というか政府保証のイメージが残っている)。
まとめると、
- 郵政民営化後も日本政府がゆうちょ銀行の経営に介入できるようになっている
- ↑より「政府が経営に口出しできるんだから経営破綻はありえないよね」という意識ができてしまう
- 「ゆうちょ銀行」というネーミングからも政府保証のイメージが強化される
預金保険の最大保護額を引き上げて公平な競争環境を実現すべきだ!!
というわけで、ゆうちょ銀行の預入限度額を引き上げるならば同時に預金保険の最大保護額をセットで引き上げる必要があります。現行の預金保険制度では基本的に1000万円までの預金しか保護されませんが(預金保険制度:金融庁も参照)、預金保険の最大保護額とゆうちょ銀行の預入限度額を一致させれば、何もしないよりはまだ公平なな競争環境になります(本来必要なのはゆうちょ銀行から政府保証のイメージを取り除くことと完全に政府の介入を受けないように完全民営化することですが…)。
利用者がより良いサービスを受けるためには、サービスを提供する側の健全な競争が必要になります。それは銀行でも同じです。健全な銀行間の競争を維持するためには、ゆうちょ銀行の「暗黙の政府保証」を完全になくすか、それができないのであればせめて預金保険の最大保護額とゆうちょ銀行の預入限度額を一致(or預金保険の最大保護額がゆうちょ銀行の預入限度額を上回るように)させるなどの手段でゆうちょ銀行の存在が民業圧迫にならないようにする必要があるのではないかと考えます。
参考リンク