人々が失われた「サードプレイス」を学校や職場に求めたため、部活問題や長時間労働が無くならないのかもしれない。サードプレイスの再建が必要か。

部活問題や長時間労働問題がなかなか解決しない背景には、人々が「サードプレイス」を学校や職場に求めたからなのかもしれません。学校・職場以外の場所にサードプレイスを再建し、定時になったら速攻で帰れるような社会を作るべきです。

もくじ

  • 「サードプレイス」の定義と、ファーストプレイス・セカンドプレイスについて解説
  • セカンドプレイスとサードプレイスの同居…部活と残業
  • セカンドプレイスとサードプレイスは切り離し、帰りたい人は定時になったら気兼ねなく帰れる社会を目指そう

「サードプレイス」の定義と、ファーストプレイス・セカンドプレイスについて解説

本題に入る前に、「サードプレイス」の定義とファーストプレイス・セカンドプレイスについての解説を行います。

アメリカの社会学者レイ・オルデンバーグ氏は、著書「THE GREAT GOOD PLACE」(日本語訳→サードプレイス)にて、サードプレイスの重要性を論じています。

ファースト・セカンドプレイスについて簡単に説明すると、

  • ファーストプレイス…家庭(プライベートな居場所)
  • セカンドプレイス…職場・学校(フォーマルな居場所)
となります。

そして「サードプレイス」は、家庭(ファーストプレイス)及び職場・学校(セカンドプレイス)から隔離された「第3の居場所」と言うべきものです。サード・プレイス – Wikipediaでは、サードプレイスの例としてカフェ、クラブ、公園などが挙げられています。サードプレイスは気軽に訪れることができ、のんびりゆるゆると滞在できるような「居場所」です。

セカンドプレイスとサードプレイスの同居…部活と残業

さて、現在の日本で「サードプレイス」はどこにあるのでしょうか。…残念なことに、それはセカンドプレイスと融合してしまっています。タイトルから答えを察している方も多いかと思いますが、学生ならば「部活」、会社員ならば「残業」がサードプレイスと化してしまっているのです。

普通、「部活」は授業の後(授業時間外)に行われるものです。授業をしている間の学校はバリバリのセカンドプレイスであり、当然様々な縛りを受けます。しかし、ひとたび授業が終わり部活が始まれば、学校の縛りから少し抜け出すことができます。授業中に脱走すれば当然何らかの制裁がありますが、部活中に脱走しても単位が落ちることはありません(規律の厳しい部だと怒られるかもしれませんが)。学校の中にありながら少しだけ学校ではない…それが部活であり、学生にとっての「サードプレイス」となっているのです。

このようにセカンドプレイスとサードプレイスが融合してしまっていると、どうしてもセカンドプレイスへの滞在時間が長くなってしまいます。長時間の練習をする部活はもちろん、ゆるい部活でも居心地が良いがために長居をしてしまい、厳しい運動部並みに長時間学校に滞在することもあるはずです。こうして子どもたちはセカンドプレイスに長時間滞在することが当たり前になります。

そして、セカンドプレイスへの長時間滞在に慣れた子どもたちが会社に就職した後も、彼らはやっぱりどこかでサードプレイスを求めます。いくら何でも家と会社を往復するだけの日々は息苦しすぎますから。…そして彼らはダラダラ残業をするようになります。

普通、残業は定時以降に行われます。この「定時以降」であるということが、会社というセカンドプレイス内にある種の異世界を作り出します。本来のフォーマルな会社からは少し逸脱し、まさに「サードプレイス」としての残業に臨む会社員も確実に存在しているのです。急ぎの仕事に追われて残業することも多いですが、定時までに終わらせることが出来る仕事をダラダラやって定時以降も会社に滞在する人もまた存在します。…ここでもセカンドプレイスとサードプレイスが融合しています。会社員の場合は、「残業」がサードプレイスとなってしまっているのです。

セカンドプレイスとサードプレイスは切り離し、帰りたい人は定時になったら気兼ねなく帰れる社会を目指そう

しかし、セカンドプレイスとサードプレイスの融合には問題があります。セカンドプレイス内にサードプレイスが生成されることにより、本当は定時になったらさっさと帰ろうと思っている人まで部活や残業などに付き合うことを余儀なくされていることがあるという問題です。

部活や残業はサードプレイスとしての側面を持ち合わせてはいますが、それが行われる場所はいずれもバリバリのセカンドプレイスであり、組織のメンバーを規律で縛る場所です。部活も残業も、組織の規律あるいはその場の空気により、参加することが義務化されることがままあります。セカンドプレイスの延長上にあるサードプレイスはどうしてもセカンドプレイスの支配下におかれる部分があり、それによって不本意ながらサードプレイスに縛られる人が出てきてしまいます。サードプレイスがセカンドプレイスの延長上にある限り、完全なサードプレイス(出入り自由でゆるい居場所)にはなりえないのです。

部活や残業を苦にしない人ならば、部活問題や長時間労働問題は問題と思わないかもしれません。しかし、できれば部活や残業を回避したい人も存在し、少なくとも法的には部活動は参加しないという選択肢がすべての学生に与えられ、残業も本来ならばさせた地点で会社は労基法違反で大変なことになります(サブロク協定は「例外」であり、平時から残業に頼ることは本来避けねばならないことです)。法的には定時になったら帰れるのですから、帰りたい人は定時でさっさと帰れるようにするべきです。

定時に帰りたい組が「定時に帰る権利」を堂々と行使できるようにするためには、この国から「定時帰宅を良しとしない空気」を駆逐せねばなりません。そのためには、真のサードプレイスを学校・会社以外の何処かに復活させ、サードプレイスに居たい人達が学校・会社に無駄に滞在しなくても良い環境を作る必要があるのかもしれません。

参考リンク

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