自動運転の車が事故を起こした時には誰が責任を取るのか?という問題を考える
投稿日:2016年05月13日
最終更新日:
自動車の運転に人間が介入しなくなる時代がやってくる。自動運転の車が事故を起こした時に、果たして誰が責任を取らなければならないのか?
- 完全自動運転の車の場合、人間(自動車ユーザー)は自動車に乗って目的地を設定すれば、後は寝ていてもいいしゲームをしてもいいし(成人ならば)酒を飲んでもいいはずだ。飲酒運転や脇見運転、居眠り運転というものは存在しない。ハンドルを握ることもなければアクセルやブレーキを踏むこともないのだから。よって自動車ユーザー(運転者)が原因で事故が起きるようなことはない。
- 自動運転の車の場合、自動運転を支えるシステム故障しているor外的要因(子供が突然飛び出してきた、道路に突然物が落下した、など)によって事故が起こる可能性は排除できない。システム故障はシステム製造者の責任になる部分もあるし、必要なメンテナンスを怠って故障したなどの場合にはユーザーにも責任がある(むしろこの場合に製造者に責任を負わせるのは製造者に対して残酷な仕打ちと考えられる)。外的要因・不測の事態の場合はどうしようもない。責任の所在をはっきりさせるのは大変である。
- 責任の所在がはっきりしないという理由で事故の被害者への賠償がなされないという悲劇は避けなければならない。自動運転の時代になったら、自動車ユーザーと自動車メーカーの双方が保険に加入して事故に備えなければならないのではないかと思う。自動運転システムの初期不良で起きた事故はメーカーの責任だし、必要なメンテナンスを怠ったせいで起きた事故の責任はユーザーにある。不測の事態への備えは自動車ユーザーとメーカーが共同で行う必要があるかもしれない。
自動運転車が事故を起こした時、「自動車ユーザー」「自動車メーカー」「事故の原因を作った人」の誰かが責任を取ることになるか…?
完全自動運転の車の場合、人間(自動車ユーザー)は運転に一切介入しません。やることと言ったら目的地の設定くらいのものでしょう。後は燃料の補充とメンテナンスでしょうか。乗っている人はハンドルを握ることもなければアクセルやブレーキを踏むこともありませんし、前方を確認する必要さえありません。運転も安全確保も全部まとめて自動運転システムが代行するわけですから。車に乗っている全員が寝ていてもゲームに興じていても問題ありません。成人ならばお酒を飲んでも大丈夫です。ハンドルキーパーも要りません。運転する必要がありませんから。
このように「運転手」が存在しないのが自動運転車の素晴らしいところです。しかし、それは同時に事故が発生した時の責任の所在が(これまでの考えだと)わかりにくくなってしまうという点でもあります。通常の(人間が運転する)自動車であれば、事故を起こした責任は運転者に存在することになります。故意に歩行者を轢き殺しでもしたら事故の責任はもちろん運転者にありますし、整備不良の自動車を運転して事故を起こしたらやっぱり運転者の責任になります。しかし、自動運転の場合は運転者がいません。このままでは責任を取る人が消滅してしまい、事故の被害者は損害賠償がなされず泣き寝入り、ということになってしまいます。
誰が自動運転車の事故の責任を負うべきなのか。考えられるのは、
- 自動車ユーザー
- 自動車メーカー(自動運転システム製造業者)
- その他事故の原因を作った人
- 自動車(自動運転システムを含む)の整備不良・故障
- 外的要因(子供の飛び出し、道路に突然物が落下した、など)・不測の事態
自動運転車の事故への備えは、自動車賠償責任保険(自賠責)の拡充・自動車ユーザーとメーカーの保険加入で行うべきかもしれない
自動車には事故がつきものです。もちろん事故が起きないのが一番ですし、事故を防ぐため、事故が起きても損害を最小限に抑えるために様々な技術が発達しました。ライトの自動点灯もそうですし、自動ブレーキも事故を抑えるための技術です。そして、それらの技術は完全自動運転の自動車を開発する基盤になるはずです。しかしそれでも、事故を完全に防ぐことはおそらくできません。事故が起きる可能性がある以上、事故への備えは必要です。完全自動運転の自動車にも事故が起きた時のための備えが必要です。
現在も自動車賠償責任保険(自賠責)によって被害者に対する最低限の損害賠償を確保しているわけですが、自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)とは | 損保ジャパン日本興亜によると、現在の自賠責だけでは被害者が死亡した場合でも支払限度額は最大3000万円止まりです。いくらなんでもこれでは少なすぎると思います(だから大抵の場合は対人無制限の任意保険を追加する)。自賠責でもせめて対人無制限くらいにはするべきではないでしょうか。自動運転車時代の自動車事故への備えは、現在の自動車賠償責任保険(自賠責)の拡充と自動車ユーザー・メーカーの保険加入によって行われるべきかもしれません。