今すぐに部活動システムそのものを変えるのは難しいかもしれないが、せめて各個人の「休む自由」は絶対に守り通さねばならない。組織の「自主性」を制限してでも。
投稿日:2017年01月28日
最終更新日:
もくじ
- 組織の「自主性」が暴走し、個人の「部活を休む自由」が脅かされ、数多の人がブラック部活に泣く。
- 学校や各部活に対して法的な縛りをかけてでも、個人の「部活動に加入しない自由」「部活を休む自由」を守らねばならない。
組織の「自主性」が暴走し、個人の「部活を休む自由」が脅かされ、数多の人がブラック部活に泣く。
2017年現在、一部の学校は生徒や教員に対して部活動への加入義務を課しており、数多の生徒教員がブラック部活に苦しめられています。しかし、周知のことではありますが、生徒や教員に対して部活動をすることを義務付ける法的根拠は存在しません。
学習指導要領では部活動について「生徒が自主的に参加する」と定められており、生徒は部活をしたくなければしなくても何の問題もありません。教員の場合は公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法(給特法)という法律で時間外労働をさせることが一部の例外を除いて禁止されており、その例外に「部活動」は含まれていません。よって、教員は少なくとも勤務時間外に部活動をする必要はありません。
学習指導要領は学校教育法などを基に作られた「告示」であり、一定の法的拘束力を持っています。それなりの法的拘束力があるルールで「部活動は生徒が自主的に行うものである(=やりたくないならやらなくて良い)」と定められているのですから、各学校が勝手に生徒に対して部活動への加入義務を課す(=生徒の自由を勝手に奪う)ことは、本来ならば許されないことです。教員の場合は法律で「時間外労働させちゃダメ」となっていますから、超勤四項目(教員時間外労働を命じても良い例外)以外の業務で時間外労働させたら「法律違反」です。以上より、法的には生徒にも教員にも「部活をしない自由」は認められています。
…しかし、学校というものは往々にして理解不能な挙動を示す組織です。生徒が別の生徒から150万円を脅し取っても警察はなかなか介入しませんし、いじめ(という名の犯罪)案件は何とかしてもみ消してしまうことがままあります。校則では生徒の私生活まで縛るところが多いです。そして、生徒や教員に部活動をする義務を課す法的根拠がどこにもない(むしろ法的には「部活を義務化してはいけない」と定めている)にもかかわらず、生徒や教員に対して部活動への加入義務を課してしまうのです。学校の「自主性」が暴走し、個人の自由を奪い取ってしまっています。
また、部のルールで(あるいは暗黙の了解・同調圧力で)「練習を休んではいけない」「土日も毎日練習する」「我が部の辞書に『休日』の文字はない」などとする場合もあります。今度は部という組織の「自主性」が暴走し、これまた個人の自由を奪い取ってしまっています。これでは「ブラック部活動」と呼ばれても何らおかしい点はありません。
学校や各部活に対して法的な縛りをかけてでも、個人の「部活動に加入しない自由」「部活を休む自由」を守らねばならない。
二つの組織の「自主性」の暴走というアンチシナジーが、現在の部活地獄を生み出す原因となってしまいました。部活動は(少なくとも私から見れば)学校内にありながら完全に学校の統制下に入っているわけではない摩訶不思議な組織です。しかし、組織の「自主性」が暴走して個人の自由を奪い、時には尊い命をも刈り取っている現状を放置することは許されません。
確かに現状でも、それなりの法的拘束力があるルールで「部活をしない自由」は保障されています。しかし、学校とその内部にある部活動という二つの組織の暴走を食い止めなければ、同調圧力や暗黙の了解などによって「部活をしない自由」は無力化されてしまいます。それを防ぐために必要なことはズバリ「法的拘束力があるルールで学校・部の暴走に非常ブレーキをかける」ことです。
学習指導要領が効かないのならば、学習指導要領よりも強烈な「法律」で部活動に規制をかければよいのです。もちろんその法律には罰則を付け、部活動の暴走を食い止めるための強大な抑止力を持たせます。組織に対して法律で縛りをかけ、個人が有する権利・自由(この場合は「部活動に加入しない自由」「部活を休む自由」)を守るべきなのです。
参考リンク
第一次部活動規制法(仮称・草案)
前文 この法律は、学校で行われる部活動について一定の規制を設け、すべての学校のすべての生徒及び教員に「部活動に参加しない自由」が保障され、それを堂々と行使できる日が来るまでの間、生徒及び教員の自由と休日を守るために制定される。
- 1.学校等が、生徒に対して部活動への加入義務を課すことを禁止する。
- 2.学校等が、教員の意に反して部活動の顧問業務をさせることを禁止する。
- 3.部活動には、最低でも週3日以上の休養日を設けなければならない。内1日以上は土休日等、学校そのものが休みになる日に設けなければならない。長期休業については、最低でもその半分以上を休養日とすること。
- 4.休養日には、部活動に関わる行為を一切行ってはならない。
- 5.部活動加入者が部活動を休むこと・脱退することを申し出た場合、いかなる理由があろうとそれを拒否してはならない。
- 6.学校長及び学校設置者は、各学校においてこの法律が遵守されるよう、適切な措置をとる義務がある。
- 7.本法に反する校則等は本法施行日より永久に無効化され、その効力は本法が廃止されても復活しない。また、本法施行日より1年経過後も本法に反する校則等の条文が改正・削除されなかった場合は、本法に反する行為が行われたものとみなす。
- 8.本法に反する行為が確認された場合は学校名及び学校設置者名を直ちに公開する。
- 9.10年以内に1回本法に反する行為が行われた場合、学校長は1ヶ月以上1年以下の5割減給または1ヶ月以上1年以下の停職とし、学校設置者に対する交付金は3ヶ月から1年の間、一律で3割カットする。
- 10.10年以内に2回以上本法に反する行為が行われた場合、学校長は1ヶ月以上1年以下の停職または懲戒免職とし、学校設置者に対する交付金は1年から3年の間、一律で7割から10割カットする。
…なお、ここに掲載した第一次部活動規制法はあくまでも通過点です(なので「第一次」とつけました)。生徒と教員の「休む自由」を最速最短コースで回復・防衛することが第一であり、過熱した部活動そのものを変えるためのものではありません。さらに規制を厳格化し、生徒と教員の休日をもっと強固に守り部活動の外部化を目指す「(第二次)部活動規制法」の私案はこちらに掲載しています。