ついに都道府県ごとの部活動の実態が明かされた。9割の中学校で全員顧問制が敷かれ、7割の中学校は休養日不足で労基法違反に陥っている。

部活動の過熱化が問題となっていますが、ついに都道府県ごとの部活動の実態が「平成28年度全国体力・運動能力等調査」で明かされました。部活問題は相変わらず深刻であり、一刻も早い解決が望まれます。

もくじ

  • 現在の部活動の実態と問題点
    • 教員の部活問題…「全員顧問制」について
    • 生徒の部活問題…(土日の)「休養日」について
    • データには現れない部活動の闇
  • 部活問題はどのようにして解決されるべきか?
    • 「健康のための運動はしたい。が、土日を犠牲にするような激しい活動はしたくない」という生徒の存在

現在の部活動の実態と問題点

日本の多くの学校では部活動が行われていますが、教員にとっても生徒にとっても「本業」ではない部活動が過熱化し、様々な問題が発生しています。Twitterなどでも教員や生徒の悲鳴が聞こえますが、部活動の実態についての調査はあまり行われていませんでした。しかし、平成28年度全国体力・運動能力等調査では部活動の実態が都道府県別に調査されており、現在の部活問題を読み解く上で重要なデータが提供されました。

このページでは、平成28年度全国体力・運動能力等調査の結果から部活問題を読み解いていこうと思います。このページに掲載されているグラフは、特にデータの出所が記されていないものは全て平成28年度全国体力・運動能力等調査の結果より作成したものとなります。グラフの詳細はこちらをご覧ください。

教員の部活問題…「全員顧問制」について


このグラフは、各都道府県における全員顧問制(その学校の全教員に何かしらの部活の顧問をさせる体制)を敷いている中学校の割合です。教員にとっても部活動は本業ではなく、勤務時間外(早朝・放課後・土日)に行われる部活動の面倒を見る義務はありません。にも関わらず、部活動の顧問という本業以外の仕事が追加され、本業のための時間まで食われているのが現状です。

「全員顧問制」は、「部活動の負担も教員みんなで分け合って負担の一極集中を防ごう」という発想で始められたものかもしれません。しかし、「できれば部活の顧問はしたくない」という教員に(時にはパワハラまがいのことをしてまで)部活動の顧問をさせる厄介な代物でもあります。法的にはやらなくて良いとされている仕事を押し付ける恰好となる「全員顧問制」は廃止し、すべての教員が「部活の顧問をしない」という選択をできるようにする必要があります。

生徒の部活問題…(土日の)「休養日」について


次は「学校のルールとして部活の休養日を設けていない」中学校の割合です。グラフの青い棒は「土日の休養日が月3回以下(≒労働基準法違反)」の学校の割合、赤い棒は「土日の休養日がゼロ日(臨時休業のみ)」の学校の割合です。過半数の中学校は休養日の設定が不十分(週休1日も確保できていない状態)であり、月1回の休養日も設けられていない学校も無視できない割合で存在している…ということになります。活動日数のみならず、活動時間も相当地獄な状態ですが、それについては部活の過熱 都道府県の実態 明らかに(内田良) – 個人 – Yahoo!ニュースを御覧ください。

一部の学校は未だに生徒に対して部活動への加入義務を課しており(こちらの記事などで詳述)、嫌でも部活をしなければならない…という生徒もいます。そこに労働基準法さえ満たしていない休養日設定が追い打ちをかけるのです。学校はいつからブラック企業戦士養成監獄になったのでしょうか。

我々人間は動けば疲れますし、時には体調を崩すこともあります。1日も休まず元気に働けと言ってもそれは無理な相談です。体と心の健康を維持するためには、休みが必要不可欠です。勉強をする上では立ち止まって物事を考える時間も必要ですが、それを確保するためにも休みは必要不可欠です。生きるためにも、将来よりよい生活を送れるようになるためにも、休みは欠かせません。せめて週休1日はきちんと確保しなければならないでしょう。現状は労基法違反を通り越して虐待ではないかと思えてきます。

データには現れない部活動の闇

なお、ここまでの解説に使用したデータは平成28年度全国体力・運動能力等調査のうち、学校が回答した部分です。よって、非公式な慣習などはデータに反映されていない部分となってしまいます。「休養日」一つとっても、部活の顧問が「今度の休養日は各自で自主練をせよ」と命じてしまえば、場所が変わっただけで、部活動は行われてしまいます。カタチだけ休養日になっていても、実際には休みになっていない可能性は十分あるのです。

また、今回の調査では「学校が生徒に対して部活動への加入義務を課しているか」という項目はありません。本来部活動は「生徒が自主的に行うもの」(学習指導要領総則を参照)であり、学校が生徒に対して部活への加入義務を課すことは本来できませんが、実際にはそれが行われているといいます。できれば今年度か来年度辺りに、そのへんの実態調査も行われてほしいものです。都合よく考えれば、文部科学省が「学習指導要領で生徒に部活への加入義務を課すことは出来ないようにしている。学校は生徒に『部活をしない自由』を保障しているな?」と無言の脅しをかけている…ということになります。実際には違うでしょうが。

部活問題はどのようにして解決されるべきか?

「部活問題の解決」と一口に言っても、思い描くシナリオは人によって異なるでしょう。私は「生徒・教員双方に『部活をしない自由』を保障→最終的には現行の部活動システムを廃止、地域活動などへ移行」という2段階で考えていますが、すぐに行われるべきなのは、

  • 「部活をしない自由」の保障
  • 休日の確保
  • 教員の無賃労働の解消
です。

「部活をしない自由」の保障は、「全員顧問制」及び「部活動強制加入システム」の廃止、全教員に対する部活顧問の拒否権付与、「部活をしなければならない」という空気の徹底排除によって達成されるでしょう。休日の確保は、法的拘束力があるルールで「部活動は週○時間まで、最低でも月○日は完全休日を作ること、…」などと定め、それを徹底すればOKです。教員の無賃労働を解消するためには、給特法を廃止し、教員についても1分単位で残業代が計算されるシステムに改める必要があります。

「健康のための運動はしたい。が、土日を犠牲にするような激しい活動はしたくない」という生徒の存在



上のグラフは、運動部・スポーツクラブに参加していない人が運動部に参加しようと思う条件のグラフです。複数回答なので合計は100%にならず、平成28年度全国体力・運動能力等調査にあった回答項目の一部は筆者が削除しています。グラフにもあるように、「自分のペースで行えるなら」「練習時間・日数がちょうどよければ」運動をしようと思う生徒は無視できない割合で存在します。

彼らは現在の過熱化した運動部の実態を見て、運動部の世界からは撤退しましたが、「健康のために運動は必要だ」とは思っているはずです。本来学校で行われる部活動は、こうした「程々に運動したい」というニーズに対応するためのものだったのではないでしょうか。全てを投げ打ち記録を追い求める「競技」ではなく、将来に渡る「健康維持」としての運動ができるのであれば、部活で運動をしたいという人も存在します。「競技」の部分を外部に切り出し、「健康維持」をメインとし、程々の活動日数・時間で行われる部活動が主流となっていれば、今ほど部活問題が大きな問題とはなっていなかったのかもしれません。

参考リンク

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