長時間労働を抑制するためには、残業代の引き上げ&労働基準法違反の罰則の強化を行って、残業させるのにかかるコストを高騰させるのが有効かもしれない
投稿日:2016年04月22日
最終更新日:
残業させるのにかかるコストを高くすれば長時間労働は減らせる!
- 本来ならば法律違反(サブロク協定という「例外」を設けているだけ)なはずの「残業」にかかるコストが安すぎる(新たに人を追加するよりも現在の人員を残業させたほうが安い)から、企業は人員の不足を労働時間の延長で補おうとする。残業代を引き上げてしまえば残業させるのにかかるコストが高騰して、人を追加するほうが安上がりになる。そうなれば長時間労働は抑制できるはず。
- もちろんただ残業代を引き上げるだけだとサービス残業(無賃労働)が増えるおそれがあるから、同時に労働基準法違反の罰則をこれでもかというくらい強化して、労働基準法違反の企業を抹殺するくらいの勢いで労働基準法違反を取り締まるようにすべき。
- 労働者に残業させるよりも新しく人を雇ったほうが安上がりになる構造になれば、企業は人員の不足に対して人員の追加で対応するようになるはず。そのためには残業代の最低基準を引き上げなければならない。労働基準法違反の厳罰化もセットで。
残業代が安すぎるから、企業は人員不足でも人を追加せずに残業で対応しようとする!
残業については、労働基準法第三十二条(週40時間以上の労働を禁止)、第三十六条(禁止されているはずの労働時間の延長についての「例外」を設ける)、第三十七条(残業代の最低基準を規定)などに規定があります。第三十六条による使用者と労働組合等の協定は「サブロク協定」と呼ばれることもあります。
労働基準法第三十二条、第三十六条、第三十七条には次のようなことが書かれています(条文は労働基準法及び労働基準法第三十七条第一項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令を参照)。
第三十二条 … 労働者を週40時間以上労働させてはいけない。第二項 1日あたり8時間以上労働させてはいけない。
第三十六条 … 使用者と労働組合(労働者の過半数で組織する労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者)が書面で協定を締結し、これを労働基準監督署に届け出れば、労働者に残業をさせてもよい。
第三十七条 … 使用者が労働者に残業や休日出勤をさせた場合は、割増賃金(残業代)を支払わなければならない。
- 時間外労働(残業)…賃金は25%増し
- 休日出勤…賃金は35%増し
- 深夜労働(22:00~翌05:00)…賃金は25%増し
- 深夜に残業させた場合…賃金は50%増し(時間外25%+深夜25%)
- 深夜に休日出勤させた場合…賃金は60%増し(休日35%+深夜25%)
2016年4月時点では、このような規定で残業や残業代計算が行われています。さて、現行の規定下で人員不足が発生した時、残業で対応するのと増員で対応するのとどちらが安上がりかを試算してみましょう。
残業と増員のどちらが安上がりかを労働者の給料だけ試算
計算条件
- 時給は1000円とする(計算を楽にするため)
- 給与は時給×労働時間で計算(諸手当は一切なし)
- 割増賃金は労基法第三十七条とそれに関する政令のものを使用
- 職場には10人の労働者がいるものとする
- 1人日=1人が8時間でできる作業量
- 1日あたりの労働時間は11時間までとする
パターン1 12人日(96時間)の作業を1日で片付ける
残業で対処する場合
96時間÷10人=一人あたり労働時間 9.6時間(1.6時間の残業)
支払う賃金は {1000円×8時間+(1000円+250円)×1.6時間}×10人 = 100,000円(但しサビ残させれば80,000円)
増員で対処する場合
12人日だから2人増員する
支払う賃金は 1000円×8時間×12人 = 96,000円
パターン2 80人日(640時間)の作業を1週間で片付ける
残業で対処する場合
640時間÷10人=一人あたり労働時間 64時間(24時間の残業が発生 11時間労働×5日 9時間労働×1日)
支払う賃金は {1000円×40時間+(1000円+250円)×24時間}×10人 = 700,000円(但しサビ残させれば400,000円)
増員で対処する場合
80人日÷5日=1日に16人必要(6人増員)
支払う賃金は 1000円×40時間×16人 = 640,000円
…以上の数字だけを見ると、残業させるよりは増員で対処したほうが安上がりに見えます。しかしながら、現実には労働者の敵「サービス残業(という名の無賃強制労働)」によって残業代をガリガリ削ってくる会社があったりしますし、人を雇うときには労働者に支払う給料以外のコスト(厚生年金や健康保険などの使用者負担)や、採用活動のコスト、そして何よりも仕事が減った時にホイホイ整理解雇するのは難しい(特に正社員)ことを考えれば、人員を増やすよりは(サービス)残業をさせて急場をしのごうとする(と言うか残業があるのを当たり前にする)経営者サイドの気持ちも分からなくもないです。サービス残業をさせてる地点で万死に値しますが。それでも、もう少し残業代が高く(&労働基準法違反の罰則が厳しく)なれば、人を増やすほうが長期的に見ても安上がりになるはずですし、そうなればもう少し雇用も増えるのではないかと思うのです。残業代上げろ!!労働基準法違反な企業はきちんと取り締まれ!!
残業における賃金割増率の引き上げと労働基準法違反の罰則強化は必須!!
ともあれ、社員に残業をさせるよりも人員を増やしたほうが経済的な状態になれば、会社は人員を追加するようになり、長時間労働を削減する効果が期待できます。そのためには、残業における賃金割増率の引き上げと労働基準法違反の罰則強化を同時に行うべきです。残業代が高くなれば、会社にとっても人員を追加したほうがトータルの人件費は安くなるはずですし、労働基準法違反の罰則をこれでもかというくらい強化してしまえば、ブラック企業を抹殺して労働環境を改善することにつながります。流石に罰則を強化するだけではちょっとあれなので、労働基準法を遵守している企業は法人税減税という形で優遇するのもありだと思います。金銭的メリットがあれば企業も動き出すはずです。
個人的には、
- 通常の時間外労働は賃金を40~60%以上増額
- 休日出勤は完全禁止or賃金を80~120%以上増額
- 深夜勤務の賃金割増率は据え置き
- 労働基準法違反の罰則(ごく軽微なもので1回目)は200万円以下の罰金or5年以下の懲役
- 労働基準法違反の罰則(重大なものは1回目から・ごく軽微なものでも2回目以降)は会社名公開の上で1億円以下の罰金or20年以下の懲役&法人税の税率をドカンと上げる(3年間~最長20年間)
- 当然ながら未払いが発覚した賃金は全額を労働者に支払い(延滞金を付けて)
- 労働基準法を遵守している企業には「労働基準法を遵守しているで賞(仮称)」を贈呈した上で法人税を減税(遵守しているかどうかは継続的に審査・証拠もきちんと出させる)
- インターバル休息(退社後、次に出社するまでの最低限の間隔を規定)の導入(労働基準法に盛り込む)