千葉県の高校受験では、内申書におもいっきり部活動歴が掲載されて、場合によっては加点対象になる…一般入試なのに?
投稿日:2016年03月09日
最終更新日:
学校のオプション・無くても良いはずの「部活動」が入試の点数を左右するところがあるのが、千葉県の公立高校入試の真実。
- 千葉県の内申書の書式(資料PDF)を見ればわかるが、「部活動の記録」を記述する欄が独立して(そこそこのスペースを占めている)存在する。これが内申のためだけの部活(いわゆる「幽霊部員」)を生み出し、生徒を学校に隷属させる。これはひどい
- そして各高校によって基準は違えど、「部活動の記録」に書かれたことが点数化されることがある(もちろん入試の得点に追加・部活動以外の記述も点数化されるが)。ある意味では高校も部活による生徒支配の片棒を担いでいる。部活は生徒を支配する道具ではないはずだ。
- 「部活顧問がブラックすぎる」現役教師が署名活動ーー学校の部活はどうあるべき? – 弁護士ドットコムでも言及されているが、部活動のことを内申書に記述することはやめるべき。部活問題を解決し、学校による過剰な生徒への締め付けを何とかするためには、入試制度を改革し、部活動歴が(少なくとも一般)入試には一切影響を与えないようにしなければならない。
内申書に書かれた部活動歴を得点化する
さて、それでは早速千葉県の公立高校入試において中学時代の部活動歴がどのような影響を及ぼしているのかの解説に入ります。こちらは千葉県の中学校で書かれる内申書(資料PDF)になります。私の内申書も掲載しておきます(多くの記述が黒塗りですがお許し下さい)。
@1uo @zoesan3 参考までに、古い資料置き場から発掘された私の内申書はこんな感じです(塗りつぶしが多い&見にくいですがお許し下さい)。しっかり「部活動の記録」の欄があり、「特記事項なし」と書かれています。 pic.twitter.com/1YUf7cx41m
— コグマ (@koguma22) 2016年3月2日
内申書にはガッツリ「部活動の記録」の欄があり、私の場合は(部活動無所属だったので)「特記事項なし」と書かれています。私の中学時代の担任曰く、「部活に所属していれば(幽霊部員でも)『〇〇部所属』と書かれ、きちんと活動していれば活動内容に言及し、何か実績(「ナントカ大会出場」とか)を残していればそれが記述される」とのことです。また、私の時には内申書作成前(10月くらいだったかと思う)に、生徒に対して部活動の実績やその他特記事項を確認する書類が配られ、そちらに書かれた内容が内申書にも反映されたようです(つまり生徒の側が内申書の「部活動の記録」「特記事項」欄にある程度口出しできる)。
そうして作成された内申書が出願の段階で高校側に渡り、いよいよ「内申書の得点化」作業が始まります。各学校毎に内申書を得点化する基準は違いますが、今回は千葉県立東金高等学校の選抜基準を見ていきます(平成28年度前期選抜)。それによると、
エ 特別活動の記録、部活動の記録及び特記事項 … 学級活動、生徒会活動、部活動、その他で顕著なものを評価する。…はい、部活動がガッツリ評価されています。部活動歴は入試に影響を与えています。もう一つ、千葉県立成東高等学校の選抜基準も見てみましょう。
入試情報 – 千葉県立東金高等学校 の「前期選抜.pdf」
…こちらはもっとはっきり「部活動の記録を得点化する」感じでしょうか。特に選抜方法(ii)では、最大79点が内申書の教科成績以外の記述からひねり出されます。1 期待する生徒像 … 本校の教育方針を理解し,文武両道を目指して,学業および部活動・生徒会活動等に努力する意欲を強く持つ者
3 評価項目及び評価基準
(2)調査書(内申書) … ア(教科の学習の記録 9教科の5段階評定3年分の合計値 最大値135(5×9教科×3年))の数値に、イ(出欠の記録)及びウ(その他の記録)について加点[選抜方法(i)は上限25点,選抜方法(ii)は上限79点]したものを調査書の得点とする。
(注釈 選抜方法(i)は内申書得点と学力検査得点で共に予定人員の90%以内で特に問題がない人に、 選抜方法(ii)は選抜方法(i)に当てはまらなかった人に適用される 選抜方法(ii)だと教科の学習の記録は3年間の合計値×0.6で計算され、出欠・その他の記録の比重が高まる)(中略)
高校入試情報 – 成東高校HPの「H28前期普通科.pdf」
ウ その他の記録(部活動の記録はここに入る) … 記載内容で、本校の期待する生徒像に当てはまるものを、数値化して加点する。
成東高校の選抜方法(ii)では、
学力検査(100点×5教科)+内申点その1(教科成績135点×0.6=81点)+内申点その2(出欠・その他の記録79点)=合計660点です。660点中79点(大体1割)が部活動や生徒会活動などの記述で決まります。選抜方法(ii)に来る生徒は残り少ない合格のイスをかけて、それこそ1点単位の争いになっていることが予想される(成績上位層は選抜方法(i)で合格確定コース)ので、完全に部活動などの記録が合否を決めかねない状況です(もっとも、千葉県の高校入試システムでは前期試験に落ちても後期試験で敗者復活戦が行われますが…)。これでは高校入試のために部活動に籍だけ置いとく人(幽霊部員)が出てきたりするのも納得いただけるかと。
高校入試で部活動歴が得点化されることが、過酷な部活動を生み出している!?
このように高校入試で部活動歴(活動実績)が得点化されることが、中学校の過酷な部活動の原因の一つかもしれません(私が通っていた公立中学でも、運動部は月月火水木金金でやってた気がします)。活動実績を稼げば稼ぐほど(勉強ができなくても)入試で優位に立てるがために、部活動は際限なき軍拡競争のごとく活動を拡大してひたすら結果を追い求め、個人の自由を全否定するものになってしまった面はあるでしょう。
この現状を打開するためには、「部活顧問がブラックすぎる」現役教師が署名活動ーー学校の部活はどうあるべき? – 弁護士ドットコムでも言及されているとおり、(少なくとも一般入試では)部活動の成績を入試の評価から外す必要があります。そうすれば部活動が入試のことを気にする必要はなくなるので、今よりはきちんと休めるようになると思います(大会等もセットでなんとかしないとどうにもならない面もありますが)。生徒と教師がきちんと休めるようにするためにも、部活動と学校は切り離されるべきです。そのためには入試制度改革も合わせて行わなければならないのかもしれません。
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