安倍総理が説明した要件:携帯電話料金の引き下げ(2年縛りの廃止) 大手キャリアのコード:違約金分割払いプラン エンドユーザーが本当に必要だったもの:2年縛りの完全廃止とスマホ通信料の引き下げ これはひどい
投稿日:2016年03月24日
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日本の携帯大手3社の殿様商売はまだまだ続くか…
- 安倍総理や総務省が「2年縛りを無くせ」と携帯大手3社に要件を示した。大手3社は確かに政府サイドが説明した要件を満たすプランを出した。…が、提示したプランはエンドユーザーの要望を完全に無視したものとなった。「月300円上乗せ」はひどい。違約金を分割前払いにしただけである。
- 例えばソフトバンクの場合は25ヶ月目以降を解約自由とする代償に月額300円の追加料金を取るプランを出した。24ヶ月目までに解約したら通常の違約金(9,500円)+300円×契約月数の違約金が上乗せ(24ヶ月目に解約すると違約金は合計で9,500円+300円×24ヶ月=1万6,700円)。25ヶ月目の解約では300円×25ヶ月=7,500円の違約金を分割前払い。32ヶ月目になると分割払いの違約金が300円×32ヶ月=9,600円となり、新プランのほうが損する結果に。なんということでしょう。というか解約する前提で契約するユーザーは果たしているのか…?
- 大手3社が携帯を使えるようにするためのインフラを整備しているのはある程度認めるが、それでももっとユーザー本位の料金プランを提示するべき。サービスが良ければ2年縛りなんていう姑息な手段に頼らなくてもユーザーを繋ぎ止めることはできるはず。来る者は拒まず去る者は追わず。これ以上料金プラン等でユーザーをがんじがらめに縛っていたら好感度やブランドイメージに傷がつくと思うのだが。
「エンドユーザーが本当に必要だったもの」を実現するのは大変だが、今回は答えがはっきりしている。「2年縛りの完全撤廃」と「高止まりする料金の引き下げ」を両方やればいいだけの話だ。
IT業界におけるシステム開発の難しさを風刺する絵に登場するワンフレーズに「顧客が本当に必要だったもの」(ニコニコ大百科単語記事)があります。本記事においては「顧客」のところを「エンドユーザー」に差し替えて使用しています(他にも何箇所か差し替えてます)。この風刺画を用いつつ考えてみましょう(注釈:「顧客が本当に必要だったもの」の「顧客」は「システム製造元・サービス提供元に対して口を挟める(というか顧客が発注する)立場の企業or個人」なので、「エンドユーザー」への差し替えは本来の意味とは異なるかもしれません。また、ここで登場する風刺画の意味することは「顧客が望まない状況を作ってしまった原因は開発側のみならず顧客側にも存在する」ということなので、今回の事案のような「あんまり口を挟めないエンドユーザー vs 殿様商売なサービス提供元」(エンドユーザーが望まない状況を作ってしまった原因がほぼ完全にサービス提供元にある)の構図でこの例を使う事自体が本来の意味とは異なると思われます。一応念のため)。
携帯料金の事例で言うと、登場人物は
- 顧客(注:顧客≠エンドユーザーであることに留意)…安倍総理、総務省他政府サイド
- サービス提供者…大手キャリア
- エンドユーザー…スマホユーザー
- 顧客が説明した要件…2年縛りをなくしてスマホ利用量の負担を減らすように(意訳)
- プロジェクトリーダーの理解…縛りを今よりもゆるくすればいいだろ(私が勝手に補完)
- アナリストの設計…新料金プランを用意して縛りを緩めつつ利益をがっぽり確保できるようにしよう(私が勝手に補完)
- プログラマのコード…2年縛りをなくす(25ヶ月目以降はいつでも解約自由にする、という意味)代償として追加料金を毎月お支払い頂くプランをご用意しました。旧プランもそのまま残るのでお好きな方をお選び下さい(私が勝手に補完)
- 営業の表現、約束…きちんと顧客の要件を満たした料金プランにできるよう頑張ります(私が勝手に補完)
- プロジェクトの書類…続きは各社のWEBサイトで(私が勝手に補完)
- 実際の運用…料金負担は高いし2年縛りも結局残ってるし…(エンドユーザーの感想)・月額利用料が安くなる旧プランをおすすめします(ショップの事情)
- 顧客への請求金額…No data.(賄賂でもやり取りするのか?カルテル維持のための出費か?)
- エンドユーザーへの請求金額…高額なスマホ利用料
- 得られたサポート…(無)
- 顧客が本当に必要だったもの…高い内閣支持率(つまり国民の支持)
- エンドユーザーが本当に必要だったもの…初月から自由に解約できる(安い)料金プランとSIMフリー(で安くてきちんと使えるスペックの)端末及び家計に優しいスマホ利用料
上の記述を見ていただければわかりますが、見事にエンドユーザーの要望が無視されています。2年縛りがなくなって月々の利用料も安くなるべきところが、2年縛りの一部廃止(24ヶ月目までは違約金を取る・月300円の負担増)orこれまでどおりの利用料(2年縛りがそのまま残る)というクソみたいな選択肢が提示されただけでした。毎月300円と言っても、2年以上支払えば結構な額になります。解約月による違約金の推移は以下のようになります。
- ~24ヶ月目まで…通常の違約金(9,500円)に加えて月300円の違約金分割払いがあるので、違約金=9,500円+300円×契約月数 (最小値9,800円(1ヶ月目で解約)・最大値1万6,700円(24ヶ月目で解約)) ここで解約すると違約金そのものは高くつくが、利用料金全体で考えればこの段階で見切りをつけてMVNOなどに引っ越すのもアリ
- 25ヶ月目~31ヶ月目まで…月300円の違約金分割払いのみ。通常の違約金はなくなる。違約金=300円×契約月数 (最小値7,500円(25ヶ月目で解約)・逆転現象が発生しない最大値9,300円(31ヶ月目で解約)) 違約金そのものは一番安く済むゾーン。
- 32ヶ月目以降…月300円の違約金分割払いのみ。ただし違約金合計そのものは9,500円を上回っている。違約金=300円×契約月数 (最小値9,600円(32ヶ月目で解約)・最大値は(契約月数の制約がなければ)無限大) 契約を継続すればするほど損失が拡大する。どれくらい契約を継続するかを想定して契約すべし…
2年縛りを維持するのはサービスに自信がない事の現れか!?
そもそも2年縛りがあるのは、一度掴んだユーザーを絶対に手放さないためと考えることができます。ユーザーが簡単には離脱できないようにするために、2年縛りで囲い込むのです。しかし、MVNOでは縛りを設けないか、せいぜい半年くらいで縛りを解くのではないかと思われます(私が利用しているU-mobileでも基本的には最初の6ヶ月だけ縛ってあとは解約自由になります)。MVNOが大手キャリアのアンチテーゼとして存在しているということもありますが、おそらく価格の安さなどに自信があるため、別に縛りをかけなくてもユーザーが定住するのではないかと考えて、縛りをなくしているのではないかと推測します。
というわけで、大手キャリアもサービスに自信があるならば2年縛りを完全撤廃してMVNOと殴り合えばいいと思います。高サービス高価格の路線が正しければ、2年縛りがなくてもユーザーは定住するはずです。それにしても、エンドユーザーとサービス提供者双方の思惑の落とし所は難しいです。ASCII.jp:ソフトバンクとauの“無意味な”新プランは誰のためか:石川温氏寄稿