国民感情と国益を損ねないためにも、日韓通貨スワップを再開するならば、韓国に対して竹島の返還や少女像の撤去などを要求し、それらの履行を確実にせねばならないだろう。
投稿日:2016年10月10日
最終更新日:
日韓通貨スワップは建前上「一方が通貨危機に陥ったら他方が米ドル(もしくは日本円)を融通する」ことになっているが、実質「日本による韓国ウォンの信用補強」である。通貨スワップを再開するならば、日本側にも何らかのメリットがなければ国益と国民感情を損なうのではないか。
- 日韓通貨スワップは当初(2001年)、日本から韓国に米ドルを供与する一方向スワップ(上限20億ドル)からスタートした。その後双方向スワップに切り替えられたが、外貨準備高は日本のほうが圧倒的に多い。通貨スワップは実質「日本による韓国ウォンの信用補強」であり、韓国側のリスクを一部なりとも日本で引き受けるものである。
- 日韓通貨スワップは2013年に満期終了した(チェンマイ・イニシアティブ下のものも2015年に満期終了)。今から再開するのであれば、日本側にも何らかのメリットが必要だ。無条件再開では国益と国民感情を損ねてしまうおそれがある。通貨スワップの再開は、韓国に竹島返還や少女像の撤去、日韓基本条約の遵守などを要求し、それらの履行が確認されてからでも遅くはないだろう。
日韓通貨スワップは建前上双方向スワップだが、実質「日本による韓国ウォンの信用補強」である。
日韓通貨スワップは、チェンマイ・イニシアティブ(ASEAN+3の合意によるアジア圏内を広くカバーする通貨スワップのネットワーク)に基づくものが2001年に始められました。当時は一方向スワップ(韓国ウォンと引き換えに米ドルが日本から韓国に流れる)で、上限は20億ドルでした。どこからどう見ても日本による韓国ウォンの信用補強です。その後いろいろあって、2006年には双方向スワップに切り替えられましたが、日本による韓国ウォンの信用補強という面は残りました(日本から韓国への韓国ウォンによる米ドル供与は100億ドル、韓国から日本への日本円による米ドル供与は50億ドルが上限)。
また、チェンマイ・イニシアティブとは別枠の日韓通貨スワップも締結され(円/ウォン または ドル/自国通貨のスワップ)、一時は日韓通貨スワップの総額が700億ドルまで膨れ上がったこともありました。しかし、諸事情によってスワップの延長はなされず、2013年には日韓通貨スワップが満期終了し、2015年にはチェンマイ・イニシアティブ下のものも満期終了しました。
外貨準備高は日本のほうがかなり多く(2014年地点で日本は1兆2000億ドルほど、韓国は3600億ドルほど)、また韓国は1997年、2008年に通貨危機を経験しており、1997年の時はIMFの支援と介入も受けています。結局のところ、日韓通貨スワップは建前上双方向スワップになっていても、実質「日本による韓国ウォンの信用補強」の側面が強いのです。また、通貨スワップが実際に使われた場合、日本は韓国にドルを渡すことになりますが、渡したドルが返済されないリスクも負うことになります。
デメリットがある契約をタダでするわけには行かない。国家間ならば尚更である。
最近になって日韓通貨スワップ再開の話が持ち上がってきましたが、いくらなんでもデメリットを背負い込む契約をタダでするわけには行きません。国家間でもそれは同じです。国家が勝手に何のメリットもない契約(条約)にホイホイ調印なんてしようものなら国益が損なわれますし、国民も黙ってはいないでしょう。国家がデメリットがある契約をするのであれば、そのデメリットを上回る(上回らなくともデメリットを帳消しにできる)メリットがなければ、国民が納得しません。
よって、日韓通貨スワップ(=日本による韓国ウォンの信用補強)を再開するというのであれば、日本側にもそれなりのメリット(見返り)が必要です。具体的には、
- 竹島の返還
- 少女像の撤去(慰安婦問題の不可逆的な解決)
- 日韓基本条約の遵守(対日賠償請求問題の完全解決)
参考リンク
- 「日韓通貨スワップ」再開に向け議論 日本にメリットはあるのか – ライブドアニュース
- イチから分かる日韓通貨協定――打ち切りのデメリットは? | THE PAGE(ザ・ページ)
- 日韓通貨スワップの3つの再開理由と日本への影響!デメリットは?
- 我が国のチェンマイ・イニシアティブに基づく二国間通貨スワップ取極締結の進捗状況 : 財務省
- 日中、日韓・現地通貨間スワップ取極の締結 ~東アジアの通貨安定に向けた通貨スワップ網の構築~ :日本銀行 Bank of Japan
- 海外中銀との協力 :日本銀行 Bank of Japan
- 外貨準備高の推移(1980~2014年)(韓国, 日本) – 世界経済のネタ帳