部活動はあくまでも「やってもやらなくても良い任意活動」だ。よって、「部活動で優秀な実績を残したから教員免許状更新講習を免除」というのは問題があると考える。教員の本業は授業である。当たり前だが。

日本においては「教員免許更新制」が敷かれています。教員免許にも有効期限が設けられ、更新するためには運転免許を更新するときのように免許状更新講習を受講する必要があります。受講しなければ当然ながら教員免許が失効します。…しかし、特定の地域では「部活動で優秀な実績を残す」事によって、免許状更新講習が免除されるというのです。

「優秀な授業(本業)をしているから教員免許状更新講習を免除」ならまだ理解できなくもないが、「部活動(副業)で優秀な実績を残したから教員免許状更新講習を免除」というのは理解不能。何があったというのか。

  • 教員免許更新制が敷かれている理由は、「その時々で求められる教員として必要な資質能力が保持されるよう、定期的に最新の知識技能を身に付けることで、教員が自信と誇りを持って教壇に立ち、社会の尊敬と信頼を得る」ためだ(文部科学省のサイトより丸コピ)。教員の本業は「授業」だから、授業に必要な知識技能をきちんとアップデートさせるために免許が更新制になり、更新の際には免許状更新講習を受けさせることになったのだろう。
  • さて、先述した通りだが、教員の本業はあくまでも「授業」である。部活動は「別にやらなくても法的に全く問題ない趣味レベルのボランティア」である(本来は)。「(賃金が支給されない)副業」と言い換えても良いかもしれない。部活動によって休日が消し飛んだりサービス残業が発生しているのも問題だが、「部活動で優秀な実績を残したから教員免許状更新講習を免除」というのも問題である。
  • 「部活動で優秀な実績を残したから教員免許状更新講習を免除」というのは、例えるなら「看護師免許所持者が自動車運転免許を更新するときの講習を免除される」ようなものである。看護師としての技能と自動車を運転する技能のどこに関連性があるのだろうか。看護師としての技能が優れているからといっても、自動車運転免許を更新するときには必要な講習をキチンと受けなければならない。これと同様に、授業を行う技能と部活の指導をする技能の関連性は高いとはいえない。野球の指導者として優れていてもそれだけで数学の授業ができるわけではないし、体育の授業でも野球だけをやるわけではない。よって、「部活動で優秀な実績を残したから教員免許状更新講習を免除」というのは問題だと考える。

教員が部活動で手抜きをする(部活動をやらない)ことは許される。「やらなくても法的に全く問題ない任意活動」だから。しかし、本業であるはずの授業で手抜きをすることは許されるのだろうか?

もはや言うまでもありませんが、教員の本業は「授業」です。特に中学高校では、基本的には教科担任制になるので、各先生は自分の専門教科があり、それを学校で教えるために教員免許を取得します。小学校の場合は基本的に一人のクラス担任が全教科を教えることになりますが、やはり教壇に立つために教員免許を取得します。教員を志望する場合は、大学の教職課程で必要な単位を習得し、教員免許を取得することになります。

さて、日本では2009年から「教員免許更新制」が敷かれています。教員免許更新制の目的について、文部科学省のサイトには以下のように記述されています。

教員免許更新制は、その時々で求められる教員として必要な資質能力が保持されるよう、定期的に最新の知識技能を身に付けることで、教員が自信と誇りを持って教壇に立ち、社会の尊敬と信頼を得ることを目指すものです。

※ 不適格教員の排除を目的としたものではありません。 教員免許更新制:文部科学省

教員免許を取得して大学を卒業し、教員として働き始めてから退職するまで、勿論人にもよりますが30~40年近く教壇に立ち続ける人もいます。しかし、大学を卒業してから10年20年と経てば、教員に求められる知識や技能が変わってしまう可能性は決して小さくありません。社会の変化に対応するためには、教員にも知識や技能のアップデートが必要になります。おそらくは教員の知識技能のアップデートが確実に行われるようにするために教員免許更新制が導入されたのではないかと思います。一部では教員養成課程を6年制にすべきだとの声も聞かれますが、私としては(教員に限らず)働き始めてからもう一度学び直すことができるようにすべきだと考えます。ある程度現場で経験を積んでから学び直すことも、時には必要ではないでしょうか。

前置きが長くなりましたが、本題に入ります。先述したように教員として必要な知識技能のアップデートが確実に行われるようにするために教員免許更新制が導入され、免許更新の際には免許状更新講習を受講することになりました。しかし、教師の本業であるはずの授業とは全く関係ない「部活動の実績」により、免許状更新講習を受けずとも教員免許を何事も無く更新できる地域があるというのです。

参考資料(PDF)にもあるように、優秀教職員表彰対象者の選考基準として「部活動」があります。もちろん部活動以外の選考基準もありますが、部活動の実績で優秀教職員表彰を受ける可能性は大いにあるわけです。(※なお、当ブログで何度となく訴えているとおり、部活動は「やってもやらなくても法的には全く問題ない任意活動」です。「部活問題」でググるか当ブログの過去記事をご覧いただければ、そのあたりの問題について記述された記事が出てくるはずです。)

そして、優秀教職員表彰の特典に「教員免許状更新講習の受講免除」が盛り込まれている地域がたくさんあります。授業が優秀な教員が教員免許を更新するときに講習を免除されるというのであれば、まだ理解できる範囲です。しかし、部活動の実績のみで教員免許状更新講習を免除されるというのは意味不明です。部活動ができれば無条件に良い授業ができるということでしょうか。謎は深まるばかりです。

「部活動で優秀な実績を残したから教員免許状更新講習を免除」というのは問題がある。教員の本業は授業であるはずだ。

教員の本業は授業であるはずなのに、どうして部活動の実績で教員免許状更新講習の免除が認められるのでしょうか。例えて言うなら、「看護師免許所持者が自動車運転免許を更新するときの講習を免除される」ようなものです。看護師免許があるからといって、無条件に自動車の運転ができるようになるわけではありません。教員の場合も、部活動ができるからといって無条件に国語や数学、英語などの授業ができるようにはなりません。部活動の指導ができる人が無条件に教科指導も上手にできるというのであれば、大学の教職課程にはきちんと「部活指導」が組み込まれ、部活動の位置づけも「先生が必ずやらなければならない(そしてきちんと給料が出る)仕事」になっているはずです。そして、部活だけ教員(BDK)という単語も生まれなかったはずです。

上記ツイートのような例は一部の極悪人がやらかした極端な事例だと信じたいものですが、学校が閉鎖的な空間であること、部活動(運動部)の顧問が絶大な権力を誇っている場合が多々あることを考慮すれば、極端な事例だと断言することが出来ないのが恐ろしいところです。ともあれ、部活動の指導だけに一生懸命になり、本業であるはずの授業などをサボったり手抜きしたりする教員のことを、一部では「部活だけ教員(BDK)」といいます。以下参考リンク。

あくまでも教員の本業は授業です。教員が部活動で手抜きをする(部活動をやらない)ことには、法的な問題はありません。部活動はあくまでも「やらなくても良い任意活動」であるからです。…「部活動で優秀な実績を残したから教員免許状更新講習を免除」というのも問題ですが、部活だけ教員(BDK)もまた問題です。部活問題は少しずつではありますが確実に認知されてきていると信じています。部活だけ教員が広く問題視されるようになるのも、いよいよ時間の問題となってくるのかもしれません。

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